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広告規制に違反した場合のマイナスインパクト

 この記事を読んでいただいている方々には、普段のビジネスの中で広告を制作・公開している方も多いと考えられます。昔と違い現代では、広告と言えばインターネット上の広告掲載が中心となっており、Googleで検索した際に一番上に表示される広告欄への広告掲載や、YouTubeでの動画広告など色々な種類のものがあります。中には、広告代理店や広告の運用を行う会社へ業務委託を行い、広告の制作から掲載・運用まで全面的に行ってもらっている方もいらっしゃるかもしれません。
 今回の記事は、そのような企業が行う広告に対する規制と、それに違反した場合に関するお話です。

 広告に対する規制は、大きく分けて①個別の業種に対する規制法令あるいは監督官庁が定めたガイドライン等に基づくもの、②業種を問わない一般的な法令に基づくもの、③任意の業界団体が独自に定めたもの(自主規制)、の3種類があります。この記事は上記のうち①②をテーマとするものです。

 まず①個別の業種に対する法令・ガイドライン等に基づく規制について、その典型例が、金融庁による金融商品取引業者(証券会社や投資顧問業等)や、保険会社に対する規制といえるでしょう。
 例えば損害保険の分野ではもともと、保険業法という「業法」とこれに基づく各種政省令があります。また、その法令が遵守できているかを、所管省庁である金融庁がしっかりと見張っており、そのガイドラインとして「保険会社向けの総合的な監督指針」を定めています。広告あるいは勧誘について規制をする保険業法第300条1項6号では、「一の保険契約の契約内容につき他の保険契約の契約内容と比較した事項であって誤解させるおそれのあるものを告げ、又は表示する行為」をしてはならないとした上で、これを監督するための上記ガイドラインにおいて「客観的事実に基づかない事項または数値を表示すること」等をその具体例として示しています。また、保険代理店(募集人)に対しても同種のルールが定められています。
 そのため、保険代理店を経営されている方や募集人の方は、これらの規制については十分ご承知のことと思います。

 ただ、法令の世界では、一つの物事に対して違う角度から複数の法令が適用されるということがよくあります。今回話題にしている広告規制については、特定の業種を対象としたルールだけではなく、例えば「景品表示法」(不当景品類及び不当表示防止法)という、毎週のように行政処分が出される不当表示規制の法律も適用されることになります。

 景品表示法は、いわば「嘘・大げさ・紛らわしい」広告を取り締まるもので、インターネット広告についても、そういった行き過ぎた広告があれば摘発をされるリスクがあります。

 直近での景品表示法違反事例としては、車両用クレベリンサービスという空間除菌を自動車内で実施するというサービスに対して、不当表示があったとして行政処分が行われたものがあります。また、皆様も報道でご覧になったかもしれませんが、メルセデスベンツ日本株式会社に対して、パッケージオプションに関する広告表示と実際の装備が違っていたなどとして、過去最高となる約12億円の課徴金納付命令(罰金のようなもの)が出されています。
 この景品表示法は、いわゆるBtoCビジネス全般に適用されるものです。「保険の業界」という切り口では保険業法等の法令が、BtoCビジネスの「取引の主体と客体」という切り口では景品表示法が適用される関係になります。

 ちなみに、弊所のような法律事務所・弁護士にも広告規制があります。弁護士の場合、第一次的な規制は日本弁護士連合会(日弁連)の規則によって行われ、専ら広告方法が弁護士倫理に反しないかが規制の対象となります。また、これとは別に景品表示法による広告規制も適用され、実際に措置命令を受けた法律事務所もあります。

 景品表示法或いは各種業法に基づく行政指導や行政処分等は、もちろんそれ自体不利益となるものです。特に課徴金となれば現実にキャッシュアウトが発生しますし、業務停止を命じられれば仕事そのものができません。しかし、これら広告規制による本当の不利益は、むしろ「処分の事実が公表されること」にあると考えられます。基本は消費者庁や監督官庁等のHPでの公表になりますが、大きな案件になると記者会見があり、メディアでも報じられます。これにより「嘘・大げさ・紛らわしい」広告をしたという烙印を押されるわけですから、指導や処分を受けた企業の信用力ダウンは不可避であり、これを立て直すことは容易ではありません。

 本ブログの読者の皆様の中には、積極的な営業活動のためWeb等で広告を運用し、さらにその中には専門的知見を有する広告運用業者に広告の制作から運用まで全面的に依頼されているところもあろうかと思われます。このような場合でも、景品表示法は原則として広告の出稿元が責任を負うと考えられております。つまり、広告業者に全面的に委託をしていて詳しくは分からない、といった場合でも、広告の運用を委託した側が摘発をされるリスクがあるということです。
 そのため、全面的に委託するという場合でも、広告の内容については(少なくとも定期的に)チェックを行い、ご自身が意図していない表現や不正確な表現、行き過ぎた表現がないか確認をすることが、このようなリスクを回避するためには必要と考えられます。

 弊所では、BtoCビジネスに関する広告表示についてのご相談を承っております。こちらの記事をご覧いただき、気になる点などがございましたら、お気軽にご相談ください。

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