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有給休暇ってなんだっけ?

 有給休暇という言葉は皆さんよく聞いていらっしゃると思います。それでは、有給休暇についてどの程度のことをご存じでしょうか?
 今回は、有給休暇について説明をさせていただきます。

 有給休暇とは、一定の要件を満たした従業員に対し、会社が定める通常の休日(所定休日)とは別に与えられる休暇のことをいいます。
 有給休暇の目的は、所定休日の他に休暇を与えることにより、従業員の心身の疲労を回復させることです。
 有給休暇については、労働基準法第39条に規定が設けられています。
 ①勤務開始の日から6か月間継続して勤務していること、②全労働日の8割以上を出勤することという要件を満たした場合、正社員だけではなく、パートやアルバイトの方にも有給休暇が与えられますので、注意が必要です(有給休暇の日数は雇用条件によって変わってきます。)。

 厚生労働省の調査によると、2021年(令和3年)の1年間に会社が付与した有給休暇の日数は、従業員1人平均17.6日で、このうち従業員が取得した日数は10.3日で、取得率は58.3%となっています。
 欧米などの諸外国では有給休暇の取得率が80%以上となっている国も多くあり、日本での有給休暇の取得率は低いと言われています。
 そこで、2019年4月から、有給休暇が10日以上付与される従業員について、年5日は確実に取得させるべきことが会社の義務となりました(労働基準法39条7項)。
 会社は従業員に対して年に5日は有給休暇を取得させないといけないことになったということです。
 これに違反すると、労働基準法第120条1項に基づき、違反者1人につき30万円以下の罰金が使用者に科されてしまいますので、注意が必要になります。

 従業員が有給休暇を自由に使用できる原則があることから、従業員は、有給休暇の取得届等に、取得理由を記載する必要はありません。
 また、会社から取得理由を口頭で尋ねられたとしても答える必要はないです。仮に回答するとしても、例えば、「私用のため」と簡単に答えるだけで良いです。
 それでは、会社は無条件に有休取得を認めないといけないのでしょうか?繁忙期等でどうしても有休取得をされてしまっては困るということもあるかと思います。そのような場合に備えて、会社は有休取得の申し出があっても、「事業の正常な運営を妨げる場合」には、別の日に有休を取得するようにと変更を命じることができます。これを「時季変更権」と呼んでいます。
 この場合、特に会社から別の日を指定する必要はなく、従業員は変更された以外の日で再度自由に休暇日を指定できます。
 有休取得でよくご相談があるのが、「退職前に有休を全部消化したいと言われたけど、引継ぎをやってもらわないと困る」という内容です。
 引継ぎがされないまま有休に入り、そのまま退職されてしまうと、事業の正常な運営が妨げられることになってしまうかと思います。
 しかしながら、この際に、時季変更権を行使することができてしまうと、従業員の有休取得を妨げることになりますので、このようなケースでは従業員の申し出を受け入れるしかありません。

 なお、労働基準法136条では、会社は、有給休暇を取得した従業員に対して、賃金の減額その他不利益な取り扱いをしないようにしなければなりませんとの規定が設けられています。
 そのため、精皆勤手当や賞与の計算上、有休取得日を欠勤扱いとすることは、違法とされますし、昇給・昇格などの処遇において、有休取得を理由に不利益な取り扱いをすることも違法となる可能性が高いため、注意が必要になります。

 その他、有休は2年で時効になってしまう、有休の買い取りは原則としてできないなどの問題もあります。

 有給休暇は多くの従業員が関わる身近な事柄ですが、従業員と会社との間でトラブルになるケースも少なくありません。
 トラブルにならないためにも、会社も従業員も有給休暇についてしっかり理解しておく必要があります。
 今回の記事を見て、こういう対応って問題ないかな?などと疑問に思われた方いらっしゃいましたら、いつでも弊所にお問い合わせください。

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