今、ビジネスをされている方の中で、コンプライアンスという言葉を知らない方はほとんどいないでしょう。コンプライアンスは、ビジネスの中で常に意識をしておくべきものです。しかし、コンプライアンスとはどういう意味なのかいざ説明しようとすると、なかなか難しいものです。概念が難しいというよりも、定義があいまいな印象があります。
日本におけるコンプライアンスとは、英語のcomplianceから来た言葉だと一般には説明されています。complianceは直訳すると、「法令などのルールに従う・遵守する」という意味になります。しかし、我々が普段使うコンプライアンスという言葉は、法令遵守という意味よりも広いものだと考えるのが一般的です。
コンプライアンスという言葉が普及した背景としては、法令に違反してなければ何をやってもいいのかといった問題意識があったからだと言われています。たしかに、法令に書かれていることが世の中の悪いこと全てを表現しきっているわけではありませんので、もっともな見解だと言えるでしょう。
法令がどのような場合に規制を置くのか、ということについて明確なルールがあるわけではないのですが、当たり前ですが、なんでもかんでも規制されると日常生活がとても不便になりますし、やり過ぎの規制というのも納得感を得にくいでしょう。
そのため、法規制が導入されるまでには、
①そのよう規制が許されるのかという「許容性」、
②国民の行動を縛るまでの「必要性」、
③規制の導入が許容され国民の行動を縛ることが必要だといえるとしても、
検討されている規制の内容や程度が適切なのか(必要以上に厳しい規制になっていないか等)という「相当性」
に関する議論が行われ、これをクリアして初めて何かを規制する法令ができあがります。
例えば、自動車はとても便利だけど人にぶつかるとひどい怪我を負わせるから全面的に禁止しよう、という話が提案された場合に、
①「許容性」…現代において自動車を使ってはならないというのはあり得ない話ではないか、という議論、
②「必要性」…怪我をさせるリスクはもちろんあるが、自動車の使用を禁止することまで必要な話なのか、という議論、
③「相当性」…怪我をさせることを防ぐという目的を実現する手段は他にもありそうなのにそこまでしないといけないのか、
という議論
このようなイメージです。
繰り返しになりますが、何か問題があるというときに、なんでもかんでも法規制を置くというのは望ましくありません。ルールで縛ったほうが良さそうだと多くの人が考えている物事だからといってルールが必ずしも定められるわけではありませんし、上記のようにルールが定められるまでのタイムラグというのもあります。
こういったルールの隙間やタイムラグを埋めるものとして、コンプライアンスという概念は有益なものと考えられます。
近年、コンプライアンス違反と主張されるものの中には、一部の人たちの主観的なものもありそうで、何がコンプライアンス違反となるのかの見極めが難しいときもあるかもしれませんが、公的機関によって定められた法令解釈のガイドラインだけでなく、ご自身のビジネス領域で「業界の自主ルール」とされているものもまずは遵守すべきだと考えられます。
業界によって様々なガイドラインなどが作られており、例えば損害保険領域については、一般社団法人日本損害保険協会が「募集コンプライアンスガイド」を定めたり、「募集文書等の表示に関するガイドライン」を定めたりといったことをされているようです。
そういったガイドラインに照らして自社の取り組みは問題ないのか、こういったガイドラインに書いてはいないが一般的なコンプライアンスの考え方との関係でこういった取り組みをしてもよいのか、といった疑問がわいてきた方がいらっしゃいましたら、弊所では法令違反に留まらずそういったコンプライアンス違反についてのご相談も承っておりますので、是非お気軽にご相談下さいませ。