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公益通報者保護制度

 皆様は、「内部通報」という用語をお聞きになったことはありますか。

 政府が政府広報オンラインにて行っている説明が、端的にまとまっているため、以下に引用します。

 内部通報制度とは、企業が企業内の不正を早期に発見して企業と従業員を守るため、組織内の不正行為に関する通報・相談を受け付け、調査・是正する制度です。
 公益通報者保護法により、従業員数(アルバイトや契約社員、派遣労働者等も含む。)が300人を超える企業には、内部通報制度の導入が義務付けられています。
 また、従業員数が300人以下の企業にも、内部通報制度の整備に努めることが求められています。
 企業は通報者や相談者に不利益な取扱いをすることが禁じられており、通報窓口などの担当者には通報者を特定させる情報の守秘義務が課せられています。
 企業の規模や従業員数にかかわらず、内部通報制度を整備していない場合、消費者庁による行政措置(報告徴収、助言、指導、勧告)の対象となり、企業名が公表されることもあります。報告徴収に応じない、又は虚偽報告をした場合は、20万円以下の過料を科されることがあります。

組織の不正をストップ!従業員と企業を守る「内部通報制度」を活用しよう(政府広報オンライン)より

 具体的な事例で考えてみましょう。

 ある会社に勤めている人が、社内で何らかの不正が行われていることに気付いて、会社のためにそれを是正したいと考えたとします。
 この場合の方法としては、まず直属の上司に報告することが考えられますが、その上司が不正に関わっている疑いがある場合には、報告先として不適切です。そこで、さらにその上の上司に報告することが考えられますが、不正が組織的に行われている等、その上司も不正に関与している疑いがある場合は、やはり報告先として不適切です。

 このような場合に備え、例えば会社が弁護士等の外部専門家を通報窓口とするという取組みがあり、これを公益通報(内部通報)と呼んでいます。
 公益通報を行った場合に、法令遵守の意識が極めて高い企業であれば、「よくぞ通報してくれた。」と称賛されることはあり得ます。
 しかし、他方で、「なんてことをしてくれたんだ、余計なことをして。」などと、会社のためを思って行動したにもかかわらず、通報者にペナルティを課すようなこともあり得ます。
 そこで、通報者に対する不利益な取扱いを禁止するため、公益通報者保護法が定められています。

 公益通報は、それをきっかけとして企業内部の不正が明るみになる可能性が大きい制度であるため、企業の立場からすると、自ら社会的評価の低下を招きよせる制度だとお考えになる方もおられるかもしれません。
 しかし、企業内の不正を早期に発見しこれを正すことは、むしろ企業や従業員を守ることに繋がるという意味で、コンプライアンスガバナンスの観点から望ましいため、公益通報窓口の設置が政府によって推進されています。
 しかし、設置が進まないことから、定期的に行われる法改正で、規制強化や通報者保護の仕組みの充実化が行われています。

 さて、今回公益通報者保護制度について取り上げたのは、公益通報者保護法を管理する消費者庁において、昨今の公益通報者保護制度の活用状況について報告書が公表されたからです。
 また、ビッグモーター事件に関連して「告発がもみ消された」などという報告書も出てきているなどしており、公益通報者保護法の改正の機運が高まってきているものと考えられ、今後の動向に注目が必要です。
 弊所では、公益通報窓口の設置のご相談や、公益通報があった場合の対応方法などについての相談も承っておりますので、お気軽に弊所までご相談ください。

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