法人化(株式会社設立)に関するトピックについてご説明していくシリーズを連載させていただいておりますが、今回で4回目となりました(ここまで、法人化の話や株式会社と他の会社についてといったもののほか、取締役等の会社役員について解説してまいりましたので、見逃した方は是非過去記事をご覧いただければと思います。)。
今回は「株主」や「株式」についてご説明いたします。
株式会社には「所有者」がおり、それが「株主」であると以前ご説明しましたが、株式会社については、(自家用車のような)単独所有が当たり前のものではありません。
といいますのも、株式会社は、複数名が一緒に所有するということが当然に認められているからです。むしろ、事業規模が大きくなれば一人の人間が所有者でい続けることは経済的に大変ですので、複数の人で共有するような仕組みを作っておくことが合理的です。これに備えた制度が「法人」です。その法人制度の中でも柔軟に「所有者」の仲間入りをすることができる(また逆に必要がなくなれば仲間から外れることができる)仕組みとして、株式及び株式会社という制度が発明されたと言ってもよいでしょう。
今では、「株券」という紙媒体のものを発行することはイレギュラーになってしまいました。そのため目に見える形の「株式」というのはほぼなくなってしまいましたが、それでも「株式」は会社の所有者であることを証明するチケットのようなものと考えてよく、その「株式」を持っている人が「株主」ということになります。
「株式」は、原則として自由に売買して良いものです。
ただ、あなたと友人が二人で立ち上げた会社について、ある日全然知らない人物から「自分も株主だ、あなたの友人から株式を買い取った」と言われて、しかもその話が本当だった場合には、あなたはその新たな株主と一緒に会社の経営方針を決めたりしないといけなくなり、色々と面倒な思いをすることでしょう。
そのため、法律上「株式」を勝手に売買できないように制限をかけることができます(「譲渡制限株式」)。会社であるが小規模で活動している株式会社については、全ての株式をこの「譲渡制限株式」としていることがほとんどだと考えられます(全ての株式が譲渡制限株式である会社を「非公開会社」といいます。)。
逆に、会社の規模が大きくなり、それこそ海外の投資家などからも出資してもらいたい、などと考える場合には、会社の株式を自由に取引できるようにしておくことになります。そして、それを市場で取り扱ってもらうことで、実質的にも自由に取引できるようにすることを株式の「上場」といいます。
日本において最もメジャーな株式を流通させる市場は、東京証券取引所(略して「東証」)であり(他にも札幌や福岡にも市場はあります。)、この東証では会社の規模等を踏まえてプライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つのランクの市場を構築しています(つい数年前まで「東証一部」「東証二部」「マザーズ」と呼ばれていました)。ベンチャー企業の中には、この「東証に上場する」ということを目標に掲げるところも多くあります。上場するためには東証の厳しい審査を受けなければならず、また企業価値もそれなりに大きなものになっていないといけません。そういった高いハードルを越えようとするということは、確かに企業にとって一つの試金石のようなものなのかもしれません。
次回は、法人化するとどういうことをしないといけないのか?という当初の話からやや外れてしまいますが、企業を上場させるにあたって必要となる要素について触れてみたいと思います。そもそも法人化さえもしていないのに、上場という話は、あるとしてもまだまだ先の話だよ、と考える方もいらっしゃるとは思いますが、事業の最終的な目標の一つとして株式上場をイメージすることは必ずしも大それたものではありません。特に、最上位であるプライム市場に上場をするような場合には株式会社のいわば最終形になっているという見方もでき、そのような最終形を早い段階から意識しておくことは有益だと考えます。
なお弊所では、今回触れた株式にまつわるトラブル等のご相談についても承っております。例えば身内が知人の会社の株主をやっていて、最近困っているという話を聞いたな、などというような、今回の記事をご覧になって何か普段の生活の中で気になってくる点などありましたら、是非お気軽にご相談くださいませ。