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法人化することの意味

 先週(2024年1月25日)、経済産業省の公式HPにおいて、「社外取締役の質の担保・向上に向けた取組の一環として、「社外取締役のことはじめ」を作成しました」とのプレスリリースが出されました。
 東京証券取引所と共同で作成されており、社外取締役に就任した方に対し、あるべき姿の指標のようなものを整理したものになっています。
 中央官庁によって公開されたものであり、既に社外取締役を務めていらっしゃる方は必読と言えます。

 ところで、社外取締役というのは、株式会社において人事のポストとして用意されることのあるもので、株式会社でなければあまり関係のないものですが、読者の皆様の中で、顧問税理士などから「法人化(株式会社を設立)した方がいいんじゃないですか」といったアドバイスを受けたことがある方はいらっしゃいますでしょうか。
 インターネットで検索しても、法人化する場合のメリットなどが説明されています(主に税制的な観点でメリットがありそうです)。

 既に法人化している読者の方々もいらっしゃると思いますが、今後、ビジネスが軌道に乗っていった暁には法人化を検討する可能性のある方々も多数いらっしゃると思いますので、参考にしていただくべく、「法人化」するというのはどういうことかについて、今回からシリーズで、法的観点からご説明をさせていただきます。

 今回は、まずそもそも、「法人」とは何なのかについてご説明いたします。

 「法人」という言葉は様々な場所で聞かれると思います。クレジットカードで「法人カード」というものもあれば、「法人営業窓口」といった言葉もあったり。

 「法人」というのは法律上の概念で、かみ砕いていえば「本当は人間ではないけれども、社会の実態を考えて、人間と同じような存在として扱うのが便利であることから、法律上人間のように扱うことにしたもの」といったものになります。
 法律の世界では、生きている人間のことを「自然人」と呼び(生まれた瞬間から自動的に(=自然に)人間として扱われる、といった意味になります。)、それの対になるものとして「法人」という概念が置かれています。
 ただ、自由に「法人」という位置づけのものが発生してしまうと混乱が生じてしまうため、法律で「法人」となるものを指定しており、その一つが「株式会社」ということになります。

「法人」が普通の人間(自然人)と同じように扱われるというのは、取引などの主体となることができるという意味です。
 ビジネスを行う際に、個人事業主のような中小規模の場合は、代表者自らが外部の事業者と契約を結ぶということでそれ程大きな不都合はないと考えられますが、規模が大きくなってきたときにそれでも代表者一個人が契約を結ぶというのは、取引先としては経済的なところで不安を感じたりする可能性があります(一個人が数千万円単位の契約を結んだときに、本当にそんな高額なものを支払ってもらえるのか、というように)。
 だからといって、では代表者と一緒に幹部数名とで契約を結び、皆でお金を支払いますと言われても、それはそれで、誰が責任を負っているのかが曖昧になってしまい、どちらにしろ不安だと言われてしまいそうです。
 こういったことから、株式会社という概念を作って、いわば巨人のようなものを生み出し、その中に自然人を置いて、その人が巨人を操縦しているようなことを法律で認めたということになります。

 説明が長くなってきますので、今回はここまでにさせていただき、次回以降、法人の一つの類型である「株式会社」や、株式会社に置かれる「役員」(取締役)、といった会社に関するものについて説明を行っていきます。今後法人化を検討する際に、法人化する結果どのような組織体制にしていかないといけないのか等のコスト分析の参考にしていただければ幸いです。

 弊所では、法人化についてのご相談も承っております。法務観点からだけでなく税務・会計といった様々な観点からの分析が必要で、法務だけで是非を判断できるものではないかもしれませんが、逆に法務観点を無視して決定することも妥当ではないものと考えられます。税理士から勧められたといった初期的な段階からご相談いただくと有益かと思われますので、是非お気軽にご相談くださいませ。

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