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㊙スタンプだけでは秘密にならない営業秘密のお話

ビジネスパーソン向けブログ

 「営業秘密」の四文字を見て、皆さんは何を思い浮かべますか?

 技術情報、顧客情報、秘伝のレシピなど、色々創造できると思います。「産業スパイ」なる言葉もあるように、営業秘密を侵害する行為はいかにも悪いことで、法的にも禁止されているような印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
 しかし、営業秘密は、㊙スタンプを押していれば保護されるというものではありません。自社の営業秘密を守るためには、営業秘密に関する法制度をざっくりとでも理解しておく必要があります。

 その前に、営業秘密そのものではありませんが、「知的財産権」について簡単に触れておきたいと思います。 
 知的財産権とは、一般に、技術の発明等を保護する「特許権」や「実用新案権」、独創的な工業デザイン等を保護する「意匠権」、芸術的な創作やプログラムを保護する「著作権」など、法律上の一定の要件を満たし、特許庁等の所管庁に登録等されることによって、そこから得られる利益を独占できる権利をいいます(著作権は登録なく保護の対象となります。)。いずれも、技術やデザイン等の情報を保護するための制度で、権利者の許諾なく無断で発明と同じ技術を使ったりすると、差止めや損害賠償請求の対象となります。

 他方、営業秘密は、それがどれほど大事で、企業活動の生命線のようなものであっても、「我が社ではこの情報は秘密である」というだけでは、法律上当然に保護されることにはなりません。この点が、一定の要件を満たせば保護の対象となる知的財産権との大きな違いです。
 では、法律上保護される営業秘密とはどのようなものでしょうか。

 これは「不正競争防止法」という法律に規定されています。この法律が定める要件を満たすと、営業秘密を漏洩したり無断使用したりした者に対して、損害賠償の請求や使用の差し止めができ、或いは刑事罰の対象となることもあります。

 不正競争防止法第2条6項には、保護の対象となる秘密情報について、
 「秘密として管理されている生産方法、販売方法、その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」
 という要件を課しています。これを細分化すると、①秘密管理性、②有用性、③非公知性、の3つの要件に分けられます。

 ①「秘密管理性」とは、文字どおり、その情報が秘密情報らしく管理されていることをいいます。
 単に書類の角に㊙スタンプを押したり、社内会議等で「この情報は秘密なので漏らさないように」と注意喚起するだけでは、秘密情報として管理されているとは言えません。その情報にアクセスできる者が限られていて、かつ外観から秘密情報であることが一見してわかることが必要です。

 ②「有用性」とは、その情報が事業活動に直接に利用されたり、経営の効率化や改善に役立つものであることをいいます。商品の詳細な製造方法、実験データ、顧客リスト、原価表などがこれに当たります。

 ③「非公知性」とは、その情報が公然とは知られておらず、情報の保有者の管理下以外では入手できないものであることをいいます。例えば、どれだけ重要な実験データであったとしても、学術論文や書籍で公表されたものは、公に知れていたり知ることができる状態にありますので、秘密情報には当たりません。

 以上を踏まえますと、企業が秘密にしたい情報は、②有用性と③非公知性の要件はクリアできる場合も多いと考えられます。問題は①秘密管理性です。そもそも顧客情報や原価表などは、一般の従業員まで共有しなければならない場面も多く、その場合は秘密として管理すること自体が非現実的であることも多いでしょう。そのため、秘密にしたい情報であっても、不正競争防止法による保護を受けることが難しいことになります。

 このように、企業において秘密情報を管理していくためには、そもそも自社で秘密として管理したい情報が法的な保護を受けられないことも十分有り得るということを念頭に置いておく必要があります。

 当事務所では、法的保護を受けにくい場合も含め、企業の秘密情報の管理に関し様々な助言やスキーム構築のお手伝いをさせていただいております。自社の秘密情報の扱いにお悩みの企業様は、是非一度ご相談下さい。

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