通信販売には様々な規制が及んでいることは既に皆さまご承知のことと思われます。
例えば、通信販売を行うには、①いわゆる「特定商取引法の表記」をWebサイト上に置き、連絡先等の情報を公開すること、②最終申込画面において定期購入形式なのに単発であるかのような分かりにくい記載を置かないようにすることといったもののほか、③消費者が望まない電子メール広告を送らないこと、といったものも定められています。
これらの規制は、「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)という法律の中で定められています。この法律は、訪問販売やマルチ商法など色々な取引類型を定めており、そのうちの一つとして通信販売も規制が置かれています。
ちなみに、よく聞く「クーリング・オフ」という制度は、訪問販売などでは使うことができますが、通信販売では適用されません。それに近い制度も通信販売規制の中では備えられていますが、それも、あらかじめ解約ルールを消費者向けに明示していれば打ち消すことができるようになっています。そのため、通信販売において消費者からクーリング・オフだと言われる場合には、筋違いなものとなっている可能性がそれなりにありそうです。
ここまで読んでいただいた中で、「自分はWebサービスも扱っているのに何もしていなかった…」と青ざめた方もいらっしゃるかもしれませんが、損害保険ということでいえば、特定商取引法の通信販売規制は、損害保険代理店等の「特定保険募集人」はおおよそ適用除外とされています(特定商取引法26条1項8号ニ、特定商取引法施行令11条、別表2第37号)ので、基本的にはご安心いただいて大丈夫かと思われます。
ただし、特定商取引法の適用除外については「●●が行う〇〇というサービス」というように、主体と行為との2つの条件で定められているため、特定保険募集人の地位さえ手に入れてしまえば通信販売規制は何も心配しなくていい、ということではありませんので注意が必要です。
損害保険代理店と言えば、保険業法の遵守が必要ですが、逆にそれだけ守っていればいいということでもありません。
通信販売という切り口では上記のとおりではありますが、法律の世界では、違う角度から二重・三重に、似たような違う規制が適用されるということがよくあります。皆様のビジネスも、気が付いたらいくつかの法令に目配せをしなければならないという事態も想定されます。転ばぬ先の杖ということで、新たなビジネスやスキームを始める際には、ぜひ一度弊所にお気軽にご相談くださいませ。