ブログ

サービス内容を一方的に変更できる場合とは?(利用規約・約款の活用)

 報道などで既にご存知の方も多いと思われますが、google 社が、迷惑メール対策の一環として、メールマガジン等をGmail 宛に配信しようとしてもブロックするような仕様に変更するとの発表が行われました。
 具体的にどういった場合にブロックされてしまうのか、ブロックされることを回避したい場合にはどういった手続きが必要なのかといった点につきましては別途それらに関する解説をご参照いただくとして、今回は、こういった仕様変更を一方的に行うことが許されるのか、許されるとしてなぜ許されるのか、といった点についてご説明いたします。
(先に結論から申し上げておくと、「事前に合意をしておけば、こういった一方的な仕組み変更も許される」ということになります。)

 法律の世界では、とある人物が他方に何らかの権利を与える合意をすることを「契約」と表現しています。
 この「契約」とは、物を売買する場合や住む家を賃貸する場合が代表例になりますが、例えば片方だけが義務を負担する場合も「契約」ですし(贈与など)、無償で何かを使わせてもらうというものも「契約」という扱いになります。
 そのため、今回の問題に絡めて言えば、有償のプランを使っているかどうかを問わず、「Gmail のシステムを利用してメールアドレスを発行してもらい、そのメールアドレスを活用してメールのやり取りをする」ということは、Google 社とGmail の利用を希望するユーザーとの間で、メールサービス利用契約が締結され、それに基づきユーザーがGoogle 社からメールサービスの提供を受けられる権利を手に入れている、という言い方ができます。
 ところで、メールサービスを利用する・利用させるということ自体にはユーザーもサービス提供者側も特段の異存はないはずですが、細かな条件については双方の希望が異なることも当然ありえるでしょう。そしてメールサービスも「契約」の一種であることからすれば、契約書に相当するようなものを作成し、様々な条件を定めておいたほうが賢明だということになります。このような問題意識からよく作成されているのが「利用規約」と呼ばれるものになります。
 「利用規約」とは、平たく言えば何らかの契約を締結する際にその契約条件を定めるもので、契約書に書かれた各種契約条項をまとめたものという点で契約書の一種という言い方もできるかもしれません(呼び方は違うものの、結局双方の合意内容・契約条件を明確にするためのアイテムという意味では共通しています)。強いて言うなら、利用規約は多数の相手と同じ条件で取引を行うため一方的に条件を提示する場合に使われるイメージです。
 この「利用規約」ですが、申込みの最終確認画面に「利用規約に同意します」という文章とチェックボックスが置いてあるような形でご覧になる方も多いかと思われます。Gmail についても、あまり心当たりはないかもしれませんが、利用する前提としてそういった利用規約に同意をしているはずです。

 さて、今回の問題には、登場人物を軸に考えた際には2つの側面があるという整理ができます。すなわち、「Gmail アドレスを現に使用しており引き続きメルマガなどを受信したい側」と「Gmail アドレス宛にメールを送信したい側」の2つです。
 今回話題にしているのはこのうちの前者ですが、Gmail の利用規約において、「迷惑メール対策の一環としてGoogle 側が必要と考える技術的な仕組みを導入するにあたっては、利用者の側は異論を唱えることはできない」と読み込むことができる条項が利用規約に最初から存在している場合や、途中から付け足されてそれにユーザーが同意している場合には、今回のように、一方的にメールシステムの仕様を変えるということができ、規約で定められているとおりユーザーは異論を唱えることができない、ということになります。

 常にこういったやり方ができるわけではないものの、利用規約の定め方次第で、サービスを提供する側において柔軟な仕組み作りをすることができます。特に消費者向けのサービスを提供する場合には利用規約で一律対応を行うことが多いと考えられますので、実際に利用規約を作成している事業者の方も多いかと思われます。利用規約という名称ではなくても、ユーザーとの契約に当たっては「約款」を用いて契約条件のご説明をされることがあるかと思いますが(例えば保険業界)、これも、事前に提供事業者側が用意した契約条件で契約に応じてほしいと提示するものという点に着目すると、「利用規約」と同じようなものと考えていただいて問題ありません。
 業法のある分野においては、法規制により利用規約(約款)の内容を無制限に決められるというわけではないものの、ルールに反しない範囲で何かしらの工夫を盛り込みたい、だが具体的にどうしたらいいのかが思いつかない、という方がいらっしゃいましたら、是非お気軽にご相談下さいませ。

関連記事

  1. カスハラ条例制定の動きについて
  2. ギグワーカーという働き方
  3. ビジネスパーソン向けブログ ㊙スタンプだけでは秘密にならない営業秘密のお話
  4. 会社役員とは
  5. 株主・株式
  6. メールマガジンの法規制
  7. 祝日はどう決まる?
  8. 公益通報者保護制度
PAGE TOP