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自由診療と保険診療

 5月30日、厚生労働省が、全国の分娩を取り扱う施設(病院・診療所・助産所)のサービス内容や出産費用について情報提供する、「出産なび」というサイトをオープンしました。
 出産費用は地域や病院その他の施設によって差があるものの、これまでは施設選びにあたってそれぞれの施設を一つずつ調べる手間がかかっていましたが、このサイトでは、それらの情報を一元的に調べることができ、活用が期待されるところです。

 ところで、皆さまは、なぜ、出産費用が地域や施設によってばらつきが生じるのか、ご存じでしょうか。
 そのお話をする前提として、治療費や手術費が、全国共通の金額で設定をされているのかを知っておく必要があります。

 日本では、国民全員が、診察・治療に充てる費用を補助する医療保険に加入しなければならないと定められています。これは、加入してもしなくてもよい「任意保険」とは違うもので、具体的には国民健康保険と社会保険です。
 強制的に加入する必要がある保険としては、他には自賠責保険が挙げられますが、これは自動車を持っている場合であるのに対して、国民健康保険・社会保険は「国民皆保険制度」として、全ての人が加入しなければならないものとされています。
 国民皆保険制度のもとでは、病院で医療を受ける必要が生じているにもかかわらず、経済的事情のため受けることができない、という事態を防ぐことにつながっているといえるでしょう。

 ドイツやフランスも、ほぼ国民皆保険といわれていますが、日本のように通院先を自由に選べる制度ではなく、まずかかりつけ医を受診しなければならない制度となっています。他方、アメリカには、全国民をカバーする公的医療保険制度はなく、民間企業の医療保険に加入して医療費を賄わなければならないこととなっています。

 現在は、自己負担割合は基本的に3割ですが、1961年の国民皆保険の実現当時からその割合ではなく、1984年当時は1割だったのが、1997年には2割、2003年に3割へと引き上げられています。

 医療行為のうち、健康保険の適用対象となる保険診療と、適用にならない保険外診療(自由診療)があります。
 保険外診療の例としては、二重まぶたの手術や豊胸手術のような、美容目的の医療行為が挙げられますが、このような美容や審美を目的とした手術は、病気に対する医療ではないため、保険外診療となっています。
 そして、出産については、正常分娩(帝王切開などの医療行為を伴わない分娩)の場合は公的医療保険の適用外である一方、異常分娩(鉗子娩出術、吸引娩出術、帝王切開術などの処置が行なわれる分娩)の場合は公的医療保険の適用対象となります。

 冒頭に掲げた、出産費用が地域や施設によってばらつきが生じる理由は、出産が基本的に自由診療となるため、その費用は産科施設が自由に決めることができることにあります。出産費用の平均額は、2022年度調査で最も高かった東京が約60万円、最も低かった熊本県で36万円と、実に24万円もの差が生じています。
 このように、出産が自由診療とされていることから、子育て世帯の経済的負担の軽減を目的として、出産一時金の給付額が、2023年4月1日以降の出産については、これまでの42万円から50万円に増額されました。出産一時金は、公的医療保険制度の中の手当金の位置づけですが、保険診療の範囲内とすべきではないかという議論が行われています。

 今回は、自由診療と保険診療についてお話をいたしました。
 自由診療と保険診療との間で法的に様々な観点で違いがあり、例えば広告や顧客紹介の許容性についてのルールが変わったりします。この点については、またの機会に取り上げたいと思います。

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