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自動運転とトロッコ問題

 皆様は、いわゆる自動運転の自動車に乗車した経験はございますか。
 一般的にイメージする「自動車」でなくとも、一部のゴルフ場では、電磁誘導式の自動運転カートが導入されていますので、自動運転の世界を体験されたことがある方も多いかと思います。

 近年、人手不足など様々な事象を解決する手段として、自動運転車の開発が進められています。
 現在のところ、あらゆる条件下における全ての挙動を自動化するという段階には来ていませんが、部分的に自動化する仕組みづくりは着々と進められています。
 法的な仕組みとの関係で言えば、2023年4月に施行された道路交通法によって、いわゆるレベル4の自動運転車(特定条件下での完全自動運転車)の公道走行が、一定の要件のもと、許容されるに至りました。

 損害保険のジャンルにおいては自動運転車の扱われ方について重要なイシューとなる可能性があり、既に研究をされている方も多いと思われます。
 自動運転には様々な論点があり、いくつもの切り口があるところですが、皆様は「トロッコ問題」と呼ばれる倫理上の課題に関する用語を耳にしたことがあるでしょうか。

 トロッコ問題とは、線路の上を制御不能となったトロッコが走っており、このままでは前方の作業員5名を死亡させることとなる、トロッコの分岐器を切り替えれば5名は助かるものの、別路線では1名が作業しており、分岐器を切り替えればその1名を死亡させることとなる、という状況において、分岐器を切り替えるべきか、切り替えるべきでないか、という倫理学上の議論です。
 この議論では、分岐器を切り替えるほうが犠牲者は減る、という考え方を採ったとすると、命の重さを単純に人数で比較していいのかという問題が生じますし、仮に作業員5名が老齢で他の作業員1名は若者だったとすれば、分岐器を切り替えると若者を死亡させてしまうのに対し、切り替えなかった場合には老齢者をひき殺すことになるという仮定を行い、この場合老齢者を犠牲にして若者を救うことを選ぶべきか、若者が先に死ぬ可能性もゼロではないのに若者を守るべきなのか、といった議論など、様々な議論を巻き起こす問題として、1960年代頃から提起されました。

 さて、自動運転においては、(最終的には)危険回避を機械が行うということになってくるのですが、例えば子供が飛び出してきて、それを回避するためには歩道に乗り入れるしかないがそこにお年寄りが歩いている場合、この自動運転車はどちらを選ぶのか、プログラミングを行う人間としてはどちらを選ばせるべきなのか、という議論があります。
 この議論は、どちらの選択の方が社会的に受容されるのかという倫理上の問題としての議論もさることながら、飛び出した子供か歩道を歩くお年寄りのどちらかを自動運転車が轢いてしまった場合に、誰が法的責任を負うのか?という視点での議論も行われています。
 ただ、現状としては、その車の運転席に乗っていた人間か、その自動運転車の行動をコントロールするAIをプログラミングした人間か、その自動車を販売したメーカーか、というように、複数の選択肢がありえ、誰に責任を負わせるのかは、未だ議論の途上にあるという状況です。

 最近、政府は、自動運転車の交通事故の調査を行う専門機関の設置について議論を行っています。これによって、個別の事故について原因究明を行い、責任の所在を明確にさせることが期待できますが、個別の事案の集積により、今後類型化が図られることも予想されます。
 弊所では、こうした先進的な法的問題に関わる事項についても、研究を深めて参りたいと考えております。

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