大手中古車販売業者による保険金の不正請求については、本ブログでも過去に紹介したところですが(ビッグモーター事件の闇~不適切な保険金請求がされていたら~)、上記事件や損保大手による企業向け保険の価格調整事件を踏まえ、金融庁は、本年3月下旬、制度・監督上における必要な対応を検討するため、「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を設置しました。
第1回会議の議事録は、先日、下記ページにて公開されましたので、御紹介します。
【「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」(第1回)議事録】
https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/gijiroku/20240326.html
有識者会議とは、政府や地方自治体の諮問機関として、様々な分野を代表する識者を構成員とし、幅広い意見をもとに制度のあり方等を検討することを目的として設置されます。
「パブリックコメント(パブコメ)」という用語も報道等で耳にするかと思いますが、これは、行政手続法上の「意見公募手続」のことで、政令や省令等の法律以外のルールについて、広く一般から意見を募って考慮するための制度です。
もっとも、具体的な案を示さずに、「どのような制度にするのがいいと思いますか」といった抽象的方法な質問で意見を募っても実益は乏しいため、パブコメによって意見を募る対象とする具体案を有識者会議の結果をもとに作るといった方法で活用されています。
例えば、法律の新設・改正における一般的な流れとしては、春頃に有識者会議が設置され、一年ほど議論を経て、次年の春頃に、当該会議における議論結果をまとめ、それに基づいて作成された法律案が国会に提出され、国会での議論を経て、6月頃まで(通常国会の会期中)に法律として成立する、というものです。
今回注目すべきは、今回の有識者会議においては、今年の6月には報告書のとりまとめが行われ、その中で評価機関の設立を提言するとの方針を盛り込むとされていることです。
上記のとおり、法律改正の場合は、1年以上かけて、じっくりと形を整えていくことが一般的です。しかし、今回は、有識者会議の設置から、およそ3か月程度でおおよその結論が出される見込みとされています。
もちろん、内容次第では、有識者会議による報告までの所要期間は変わり得ますので、必ずしも、報告書のとりまとめまでの期間が短いからといって問題があるとはいえません。
むしろ、大事なことは、それだけ早い動きで仕組みが変わることとなれば、損保代理店の実務に影響を与える時期が、かなり早いタイミングになる可能性があるということです。
今回については、不正請求等の問題が社会に与えるマイナスのインパクトが相応に大きいものだったとだと考えられ、報告書のとりまとめまでの期間が、一般的な流れと比較して短くてもやむを得ないという見方もあり得ます。
もっとも、損保代理店にとっては、実務への影響が大きくなることも予測され、有識者会議においては、そういった影響にも配慮した十分な議論が望まれるところです。
議論はまだ始まったばかりですが、具体的な内容については今後、有識者会議にて煮詰めていくものと考えられますので、今後も動きがありましたら、こちらのブログで御紹介します。