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「離婚」について知っておきたいこと(第8回)

 離婚にまつわる事項のうち、今回は年金分割についてお話ししていきます。

「年金」とは?

 そもそも年金は社会保障の一種ですが、まず、現在、日本国内において施行されている年金について概略を説明します。
 まず国民年金は、日本国内に住所がある20歳以上60歳未満の人は全員が加入しなければならないことになっており、国民年金に加入すると毎月の保険料を納付しなければなりません。
 そして日本の年金制度はこの国民年金を基礎としています。
 このため国民年金のことを基礎年金といいます。

 国民年金の加入者(被保険者)に発生した事由に応じて、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金、付加年金、寡婦年金及び死亡一時金を受給することができます。

 そのうち、老齢基礎年金は被保険者が老齢になると受給できる年金です。
 具体的には20歳で加入した後60歳に達するまでの40年間保険料納付すれば、65歳に達したときに老齢基礎年金を受給することができます。
 これによって老後も経済的に安定した生活を送れるようにするというものです。

 国民年金の被保険者を大まかに整理すると、農業や小売業等の自営業者(1号被保険者)、会社員や公務員等の厚生年金保険の被保険者(2号被保険者)、2号被保険者の収入によって生計を維持する者(3号被保険者)に分類されます。

 ちなみに、国民年金の保険料は所得にかかわらず定額ですが、厚生年金や共済年金の保険料等は、給与や賞与等の所得に比例しており、保険料に応じた年金額を受給できることになります。

 このように、日本における年金制度は、国民年金を基礎年金とし、その上に厚生年金や共済年金がある、という仕組みになっています。

「離婚時年金分割」の導入

 もっとも、現役時代の男女の雇用の格差から、夫婦の年金受給額に格差が生じる場合があります。
 例えば、厚生年金保険の場合、老齢厚生年金等の給付額は、被保険者の標準報酬に基づいて算出されます。なお、「標準報酬」とは、給与・賞与の平均額に、一定の係数と被保険者であった期間を乗じて算出したものをいいます(保険料の納付額ではありません)。

 ところが、夫婦が離婚した場合において、配偶者の一方が婚姻期間中に就労していなかったり、就労していたとしても低賃金であったり、短期間にとどまっていたりすると、受給できる厚生年金保険の保険給付額がないか、あっても少ないため、十分な生活水準を確保できないことになってしまいます。

 過去の裁判実務では、このような不公平を解消する方法として扶養的財産分与を認め、一方に受給される年金を分割して支払うよう命じる等して工夫していたものの、受給対象者である相手方が死亡してしまうと、もう一方の元配偶者は支払を受けられなくなる、という問題がありました。

 そこで、平成19年4月から、厚生年金等の年金額の算定の基礎となる標準報酬等について、当事者間の合意又は裁判による分割割合を認め、その定めに基づいて、夫婦であったものの一方の請求により、標準報酬等の改訂等を行う「離婚時年金分割制度」が導入されました。

 この制度は、例えば婚姻中に働いていなかった妻が、働いていた夫の標準報酬を、妻の標準報酬とすることができるというものです。これを「分割」と呼びます。
 つまり、標準報酬の分割を受けると、分割を受けた妻が分割を受けた分を自分の標準報酬とすることができるので、これに応じた老齢厚生年金の支給を受けることができる、というわけです。
 「年金分割」というと、あたかも自分が受給している年金額の一部を分けてあげる、というイメージを持ちますが、実はそうではありません。

離婚時年金分割の種類

 離婚時年金分割には、合意分割3号分割があります。

 まず、合意分割とは、離婚した夫婦の一方の請求により、厚生労働大臣が離婚について対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定の処分を行う制度です。

 この前提として、夫婦の対象期間の標準報酬総額の合計のうち、その一方に割り当てるべき割合(按分割合)を定める必要があります。

 この按分割合は、夫婦の合意で定めるのが原則ですが、協議ができない、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に申し立てることで、按分割合を定めることができます。

 次に3号分割とは、例えば夫婦のうち会社員の夫が被用者年金(厚生年金保険)に加入し、妻が扶養に入っていた期間(3号被保険者)がある場合に、その期間について、被扶養配偶者から厚生労働大臣に年金分割を請求することにより、標準報酬を2分の1の割合で分割する制度です。

 この場合は、分割の割合を個別に定める必要はないため、家庭裁判所が関与することもありません。

年金分割(合意分割)の方法や流れ

 先に述べたように、合意分割の場合において当事者で協議して定めることができない場合は、申立てにより家庭裁判所で定めることとなります。
離婚訴訟においても、申立てがあれば裁判所が判決で定めることとなります。

 按分割合とは、当事者双方の対象期間における標準報酬総額の合計額に対する割合を指します。
 そのため、仮に按分割合を0.5とすると、対象期間における標準報酬総額の合計額の割合を0.5ずつ、ということになります。
 つまり、対象期間における夫の標準報酬総額が1億円、妻のそれが5000万円で、按分割合を0.5とする場合は、夫の標準報酬総額から妻に2500万円を割り当てて、双方の標準報酬総額を7500万円((1億円+5000万円)×0.5)ずつにするということです。
 夫の標準報酬総額1億円の0.5(5000万円)を妻に割り当てるとか、夫の年金受給額の半分を妻に渡す、ということではありませんので、注意が必要です。

 年金分割によって標準報酬の改定が行われ、この改定後の標準報酬総額が年金額算定の基礎となります。
 ただし、厚生労働大臣に対する年金分割の請求は、離婚をした日の翌日から起算して2年以内に行う必要があります。2年を経過する前に、家庭裁判所に年金分割の申立てをすれば、その事件の進行中に2年を経過しても請求権を失いません。
 しかし、その場合は、分割割合を定めた審判・判決の確定や調停・和解の成立後1カ月以内に、年金事務所に年金分割請求をする必要があります。

 年金分割で按分割合を定めるには、それに必要な一定の情報を把握することが必要です。
 このため、夫婦の双方又は一方の請求により、厚生労働大臣が、「年金分割のための情報通知書」と呼ばれる書面で情報を提供する制度が設けられています。

 年金分割の按分割合は、離婚後の高齢単身者の生活保障を図る制度目的から0.5とされます(筆者の経験からは、0.5以外に定められたことはありません)。

 他方、当事者双方が年金分割をしないことにしたい場合は、「年金分割請求権を有する当事者が、他方当事者に対して年金分割審判及び調停の申立てをしない」という合意をすることになります。
 これは、公法上の請求権を放棄する形式は採れないものの、申立権を行使しないという限りでは許される、と解釈されているためです。
 ただし、このような合意は、いわゆる合意分割にのみ有効で、3号分割の場合はこのような合意をしても、年金分割請求権を制約することはできません。
 これは先に述べたように、3号分割は厚生労働大臣に対する請求をすれば当然に分割され、調停や審判を経る必要がないためです。

 さて、今回までで、離婚をめぐる主要な事項をひととおりお話してきました。
 そこで、次回は番外編として、日本における離婚の歴史について、主に江戸時代を中心に取り上げてみたいと思います。

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