おまじないのようなタイトルですが、最近時事ネタを題材にした記事ばかりでしたので、今回は、条文や契約書によく出てくる、「及び」、「並びに」、「又は」「若しくは(もしくは)」の使い分けについて解説します。
そんなに大事な話???と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、法解釈や契約実務においては、この使い分けを理解することは、大変重要です。
この置き方を間違えると、あとあと契約書の解釈で余計な論点を作ってしまうリスクがあるのです。
「及び」「並びに」は英語で言うとand、「又は」「若しくは」はorですよね、特に問題はないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに英語に置き換えればそのとおりなのですが、それでは「及び」と「並びに」、「又は」と「若しくは」の使い分け方をご存じでしょうか?
andを使いたい場合、
①基本は「及び」
②2段階のand関係を表現したいときは小さい段階の側を「及び」にし、大きい段階を「並びに」にする
③3段階以上のand関係の場合は1段階目(一番小さい段階)を「及び」、2段階目以上の段階を「並びに」にし、複数の「並びに」については文章構造を見てどことどこが並列なのか判断する
④1つのand関係の中で要素が3つ以上の場合は、A、B及びCというように最後のところだけ「及び」(や「並びに」)の要素を書く
といったルールとなっています。
※or関係については、「及び」を「若しくは」に、「並びに」を「又は」にすれば以上の説明が基本的に妥当しますが、①だけは少し違い、orの場合基本が「又は」になっています。
そのため、
A、B、C及びD並びにE並びにF
という場合、
((A and B and C and D)and E)and F
という構造になっているということになります。
また、
A、B、C若しくはD又はE又はF
((A or B or C or D)or E)or F
という構造になっているということになります。
要素がこのくらい多い場合は、andとorが入り乱れることも往々にしてあります。また、「並びに」や「又は」が複数出てきてややこしくもなります。
A及びB又はC及びD並びにE又はF
という場合、
((A and B)or(C and D))and(E or F)
という構造になります。
一文中に「又は」が2回出てきますが、これは構造が2段階になっているのではなく、1段階のorが2つ出てきているということを意味します。
段々と複雑になってきますが、その場合and/orを無理やり一文・一文節に盛り込もうとせずに文章をうまく分けたり、違う視点で対応すべき場合もあります。
以前こういった文章を見かけたことがあります。
本契約は、当社又は当社子会社における役員又は従業員もしくは顧問その他名目の如何を問わず会社又は子会社との間で委任等の継続的な契約関係にある者を適用対象とする。
文意から考えると、おそらく
本契約は、役員、従業員又は顧問その他名目の如何を問わず会社若しくは子会社との間で委任等の継続的な契約関係にある者を適用対象とする。
とするか、and/orを切り離す修正の仕方として、
本契約は、当社又は当社子会社における役員又は従業員のほか、顧問その他名目の如何を問わず会社又は子会社との間で委任等の継続的な契約関係にある者を適用対象とする。
といった修正が必要かと思われます。
新規事業や、重めの契約書だと案外こういった複雑なand/or関係の条項が盛り込まれる例も出てきます。上記の「本契約は、…」のような文章であれば、合理的に解釈して意味をちゃんと理解できるかもしれませんが、場合によっては致命傷につながることもあるかもしれません。契約書を読んでいて難しいと感じた場合には、ぜひ一度弊所までご相談ください。