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【前編】生成AIを会社で利用するときの法的注意点

 ChatGPTをはじめ、Gemini、Claude、Microsoft Copilotなどの生成AIは、いまや多くの企業で利用されるようになりました。
 メールの作成や議事録の要約、企画書の作成など、業務効率化に大きく貢献する一方で、使い方を誤れば情報漏えいや著作権侵害などの重大な問題につながるおそれがあります。
 「うちは中小企業だから関係ない」と思われるかもしれません。しかし、実際には世界的な大企業でも生成AIの利用によるトラブルが発生しています。

1 サムスン電子で実際に起きた情報漏えい問題

 2023年3月、韓国のサムスン電子では、社員が業務中にChatGPTへ半導体壊死増の良品率最適化に関するソースコードや設備測定用のデータベース、会議資料などの半導体関連情報を入力したことが報じられました。社員としては、「コードをチェックしてもらいたい」、「議事録を要約したい」という目的だったとされています。しかし、その結果、社外の生成AIサービスへ機密情報を入力したことになり、情報管理上の問題となりました。
 その後、サムスン電子は生成AIの利用を制限し、社内向け生成AIの開発・導入を進めることとなりました。この事例は、「悪意がなくても情報漏えいは起こる」ということを示しています。
 生成AIは非常に便利ですが、「入力した情報がどのように取り扱われるか」を理解しないまま利用することにはリスクがあります。

2 日本でも国がガイドラインを策定

 こうした状況を受け、日本でもAIの適切な利用についてルール作りが進められています。
 総務省と経済産業省は2025年3月に共同で「AI事業者ガイドライン」を公表し、生成AIを提供する事業者だけでなく、AIを利用する企業にも望ましい対応を示しています(2026年3月に最新版を公表)。ガイドラインでは、人による適切な確認、個人情報への配慮、セキュリティ対策、透明性、リスク管理等が重要であるとされています。
 法律そのものではありませんが、今後企業がAIを活用する上での実務指針となる重要な資料です。つまり、「AIだから自由に使ってよい」という時代ではなく、「AIを適切に管理して利用する」という時代へ移行しているといえるでしょう。

3 そもそも生成AIとは

 生成AIとは、文章や画像、音声、動画、プログラムコードなどを自動で作成できるAIの総称です。代表的なサービスとしては、ChatGPT、Gemini、Claude、Microsoft Copilot、Perplexity、Adobe Firefly、Midjourney、Stable Diffusion等があります。
 これらは用途こそ異なりますが、「人が入力した指示(プロンプト)に応じて新しいコンテンツを生成する」という点では共通しています。
 最近では、メールの返信や契約書の下書き、プレゼン資料の作成など、日常業務に生成AIを利用する企業も珍しくありません。また、社内チャットや業務システムに生成AIが組み込まれるケースも増えており、「生成AIを使うかどうか」ではなく、「どのように安全に使うか」が重要な時代になっています。

4 生成AIを活用するメリット

 生成AIは、従来の検索エンジンとは異なり、「文章を作る」「整理する」「要約する」「アイデアを出す」といったことを得意としています。
 例えば、お客様へのメール文の作成、求人票の作成、社内規程のたたき台、プレゼン資料の構成、ブログ記事の下書き、契約書のチェックポイントの整理等、多くの場面で活用できます。また、専門知識がない社員でも一定レベルの文章を短時間で作成できるため、業務時間を大幅に削減できるケースもあります。
 しかし、その一方で「AIが作ったから安心」という考えは非常に危険です。AIはあくまでも業務を補助するツールであり、最終的な責任は利用する会社側にあります。

5 リスク① 個人情報の入力

 もっとも注意しなければならないのが、個人情報の取扱いです。
 例えば社員が、顧客名、住所、電話番号、メールアドレス、病歴、給与情報等をそのまま生成AIへ入力してしまうケースがあります。
 会社としては、「業務の相談をしているだけ」という感覚かもしれません。しかし、入力した内容によっては個人情報保護法上の問題が生じる可能性があります。特に、「○○株式会社の山田太郎さんとの契約について相談したい」等、個人が特定できる情報をそのまま入力することは避けるべきです。
 AIサービスによっては、入力内容がサービス改善のために利用される場合もあります。現在では企業向けプランなどで入力データを学習に利用しない設定が可能なサービスもありますが、利用しているサービスの仕様を確認せずに情報を入力することは避けなければなりません。
 会社としては、個人名は入力しない、顧客情報は匿名化する、機密情報は入力禁止といったルールを定めておくことが重要です。

6 リスク② 営業秘密や社外秘情報の漏えい

 個人情報だけではありません。会社の営業秘密や未公表情報も入力してはいけません。
 例えば、新商品の企画、取引先との契約内容、見積書、財務情報、開発中の技術、社内マニュアル、M&Aに関する情報等は、会社にとって重要な秘密情報です。これらを生成AIへ入力すると、意図しない形で情報が漏えいするリスクがあります。
 特に、従業員が「契約書を要約してもらおう」「提案書を添削してもらおう」と軽い気持ちで利用してしまうケースは十分に考えられます。会社としては、「入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」を明確にルール化しておくことが重要です。

7 「便利だから自由に使う」は危険

 生成AIは非常に便利なツールですが、便利だからといって何でも入力してよいわけではありません。
 従業員一人ひとりの判断に任せてしまうと、情報漏えいや著作権侵害など、企業にとって大きなリスクにつながるおそれがあります。だからこそ、会社として一定のルールを整備し、安全に利用することが重要です。

 前編では、生成AIを利用する際の代表的な法的リスクについて解説しました。
 生成AIは、正しく活用すれば企業の大きな力になります。しかし、法的リスクを理解しないまま導入すると、思わぬトラブルにつながる可能性もあります。
 ニューポート法律事務所では、生成AIの導入に伴う社内ルールの整備や情報管理体制の構築、就業規則・情報セキュリティ規程の見直しなど、企業の実情に応じた法務サポートを行っています。生成AIの活用についてご不安な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

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