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連載企画:カスハラ対策義務化に対応する実務フローと契約・運用の整備

 前編で述べたとおり、改正労働施策総合推進法の施行により、カスハラ防止措置は企業にとって義務となります。もっとも、制度を形式的に整備するだけでは、実務上の問題は解決しません。実際に機能する体制を構築するためには、現場での運用を前提とした設計が不可欠です。
 その際に中核となるのが、「線引き」と「証拠化」という二つの視点です。

1 対応フローの考え方

 カスハラ対応においては、場当たり的に判断するのではなく、一定の流れに沿って対応することが重要です。
 まず初期段階では、感情的な応酬を避け、事実関係の確認に徹することが求められます。この段階での不用意な発言や安易な謝罪は、後の紛争において不利に評価される可能性があります。その上で、企業として対応可能な範囲を明確にし、それを超える要求については応じないという判断を行います。この線引きが曖昧な場合、要求は必ずエスカレートします。
 さらに、一定の段階に至った場合には、担当者単独での対応を終了し、上位者や管理部門に引き上げることが必要です。個人対応のままでは、判断の一貫性が失われ、対応の適否が後から問題となります。
 最終的には、対応の打ち切りや取引の継続可否といった判断も視野に入れることになります。

2 証拠化の重要性

 カスハラ対応においては、どのような対応をしたかと同様に、その対応をどのように記録しているかが重要となります。
 紛争化した場合、企業が適切に対応していたかどうかは、最終的には記録によって判断されることになります。そのため、対応の日時、相手方の発言内容、要求内容、それに対する自社の判断と対応を、時系列で整理して残しておくことが不可欠です。
 また、可能であれば通話の録音やメールの保存なども行い、客観的な資料として残しておくことが望ましいといえます。

3 契約によるリスクコントロール

 実務上、カスハラ対応を安定させるためには、契約による事前の整理が有効です。
 具体的には、一定の迷惑行為や不当要求があった場合に、サービスの提供を停止できる旨や、契約を解除できる旨を明記しておくことが考えられます。これにより、事後的な対応ではなく、事前に一定のルールを設定した上での対応が可能となります。
 もっとも、条項を設けるだけでは足りず、その内容が実際の運用と整合していることが重要です。現場で使われない条項は、紛争時にも実効性を持ちません。

4 運用と教育

 制度や契約を整備しても、それが現場で適切に運用されなければ意味がありません。
 現場の担当者がどのような場合にどのような対応をとるべきかを理解し、必要に応じて上位者に相談できる環境が整っていることが重要です。そのためには、単なるルールの周知にとどまらず、具体的な事例を踏まえた運用レベルでの共有が必要となります。
 改正法施行後は、カスハラ対応の不備がそのまま企業の管理体制の不備として評価されることになります。
 その結果、行政対応にとどまらず、労務紛争や企業の信用低下といった形で影響が及ぶ可能性があります。特に、何も対応していない状態は最もリスクが高いといえます。

 カスハラ対応は、単なるクレーム処理ではなく、企業のリスク管理の一環として位置付ける必要があります。適切な線引きと、その判断を裏付ける記録、さらにそれを支える契約と運用体制が整って初めて、実効性のある対応が可能となります。
 ニューポート法律事務所では、規程や契約の整備にとどまらず、実際の運用を前提とした体制構築の支援を行っています。現状の対応に不安がある場合には、早期にご相談いただくことをお勧めします。

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