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連載企画:「離婚」について知っておきたいこと(第1回)

 前回までの相続に関する連載に続き、今回から「離婚」についての新連載を始めていきます。
 弁護士に依頼をする場面として思い浮かぶ案件の内容として「離婚」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
 もっとも、離婚には、どのような方法があり、またどのようなことをめぐって争いになりやすいのかは、あまりイメージがわかないという方もいらっしゃるでしょう。
 そこで、本連載の第1回では、離婚の基本的な種類と、それぞれの手続の流れ等について解説します。

日本における離婚の4つの種類

日本の法制度上、離婚には以下の4つの種類があります。

① 協議離婚(当事者同士の話し合いによる離婚)
 家庭裁判所等の関与はなく、当事者同士で話し合い、合意のうえで書面(=離婚届)を市町村の役場に提出することで成立します。
 離婚届には、「親権を行う子」を記載する欄があり、夫婦の間に未成年の子がいる場合は、離婚届によって親権者を協議で定めることができます。
 ただし、財産分与や養育費等の他の離婚条件は離婚届に記載欄はないため、別途、書面で明確に定めておかないと、後々トラブルの火種になりかねません。
 そのため、例えば公正証書を作成して、当事者間の取り決めの内容を明確化しておくことが推奨されます(公正証書を作成する意義については、後の回でご紹介します。)。

② 調停離婚(家庭裁判所での話し合いによる離婚)
 夫婦の話し合いでは離婚をするかどうかが決まらない場合、あるいは離婚するとしてどのような条件にするかが定まらない場合は、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立て、調停委員を介して合意形成を目指すこととなります。
 調停は非公開で行われ、各当事者が交代で「調停室」と呼ばれる裁判所の一室に入り、調停委員に対し、自分の主張を述べたり、あるいは調停委員を介して相手方の主張を聞くことが行われます。
 離婚調停を利用するために裁判所に納める費用は、印紙代1200円のほかは、郵便切手代が1500円程度ですので、イメージよりはかなり安いのではないでしょうか。
 なお、離婚調停は、正式には「夫婦関係調整(離婚)調停」という名称ですが、「円満調停」(夫婦関係調整(円満)調停)という調停類型も設けられています。
 これは離婚を前提とせず、夫婦関係を修復・改善することを目的とした調停です。実際に、離婚を希望する夫婦の一方が離婚調停、希望しない他方が円満調停を申し立てるケースが見られます。
 調停で合意に至れば(=「調停成立」と呼ばれます。)、調停調書に記載された内容が法的効力を持ちます。

③ 審判離婚(家庭裁判所の審判による離婚)
 離婚調停が合意に至らなかった場合(=「調停不成立」と呼ばれます。)、家庭裁判所が、その権限で審判による離婚を認める制度もあります。
 ただし、夫婦のどちらか一方が審判に異議申立てをすると審判は無効になるため、実際に用いる例は極めて乏しく(実際に私自身も審判離婚のケースに触れたことはありません。)、調停不成立の場合、ほとんどは次に紹介する④裁判離婚に進みます。

④ 裁判離婚(訴訟による離婚)
 調停が不成立となった場合、家庭裁判所に訴訟を提起することで、最終的な判断を裁判所に委ねる手続です。
 この場合、民法では、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができるとされています(これらを「離婚原因」といいます。)。
 その内容は以下のとおりです。

1 配偶者に不貞な行為があったとき。
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

 性格や価値観の違いが著しい、というような場合は、上記のうち5号該当性を主張することになりますが、裁判離婚は、一方の当事者が離婚を拒否している場合でも裁判所が離婚を成立させる制度であることから、「婚姻を継続し難い重大な事由」として、「重大な」との一定の絞りがかけられています。

離婚手続の基本的な流れ

 離婚の方法は、上記に挙げた4種類ですが、離婚に至る一般的なプロセスは次のとおりです。

【協議離婚の場合】
話し合いによる合意形成
    ↓
離婚届の記入と証人(2名)の署名
※ 未成年の子がいる場合、親権を決めて記載する必要があり、この記載がない場合は受理されません。
    ↓
市区町村の役所へ提出
    ↓
離婚成立・戸籍反映

【調停離婚・審判離婚・裁判離婚の場合】
離婚調停の申立(家庭裁判所)
※ 調停前置主義と呼ばれ、いきなり離婚訴訟を起こすのではなく、まず調停を経なければならないのが原則です。
    ↓
「調停期日」と呼ばれる協議の場を経て、成立оr不成立
※ 離婚調停が成立した場合は、裁判所が作成する調書と、離婚届(自分の欄を記入したもの)を市町村の役所に届け出ます。
    ↓
不成立の場合、離婚訴訟へ移行
※ 離婚審判がほとんど用いられないことは上記のとおりです。
    ↓
和解оr判決確定後に離婚成立
※ 離婚調停が成立した場合と同様、和解調書оr判決書(+判決の確定証明書)とともに、離婚届と併せて市町村の役所に提出します。

離婚事件における主な争点

 離婚に際して当事者間で争点となる事項は、主に以下のものが挙げられます。

・親権者をどちらにするか
・婚姻費用、養育費の額
・財産分与
・離婚慰謝料(離婚原因を含む。)
・年金分割

 そこで、次回からの記事では、これらの主な争点について、掘り下げていくことにします。

 離婚は、双方当事者の感情が絡む紛争の代表例である一方、情報や資料収集等の準備が求められる事柄でもあります。
 離婚に向けては、事前準備の方法もさることながら、離婚後の生活設計も考慮に入れて進める必要がありますので、法律相談を含め、弊所にお問い合わせください。

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