会社経営の基本となる法令は色々ありますが、皆様は「株式会社」「有限会社」「合同会社」が何という法律を根拠として設立されているかご存知でしょうか。
これら会社の設立、運営、清算に関する決まりごとのほぼ全てを規定している法律を、「会社法」といいます。
実は会社法は比較的新しい法律で、平成17年に制定され、平成18年5月1日に施行されました。それ以前には「商法」という現在もある法律の一部に会社に関する規定があり、それを一般に「会社法」と呼んでいましたが、商法の会社に関する規定をそっくり削除し、新しい法律として制定したものが、現行の会社法です。現行会社法の施行前は、株式会社の最低資本金は1000万円、有限会社では300万円とされており、この払込証明がなければ会社を設立すること自体ができないというハードルがありましたが、現行会社法の施行後には最低資本金の規定がなくなり、「資本金1円」でも設立できるようになったことで、当時は話題になりました。
また、現行会社法施行以前には、「有限会社法」という会社法とは別の法律がありました。旧会社法には「合名会社」「合資会社」「株式会社」の3種類の形態の会社が規定されていて、有限会社は株式会社とは別の法律を根拠にしていたのです。これが現行会社法施行とともに廃止され、かつての(今も続く)有限会社の形態は制度上株式会社に一本化され、それ以降新しい「有限会社」を設立することはできなくなりました。もっとも、従来からある有限会社に、突然「株式会社」への商号の変更を強制すると混乱を招くため、新しい法律の施行の時点で有限会社であった会社は、引き続き「有限会社」と名乗ることができ、制度の上では株式会社として取り扱うことになりました(これを「特例有限会社」といいます。)。したがって、現在の特例有限会社は、中身は株式会社であることになります。この特例有限会社は全て平成18年4月以前に設立された会社ですので、本ブログ投稿の時点では、どんなに新しくても19年以上続いていることになります。そういった意味では、「有限会社」を名乗っている会社は相応の伝統があり、安定経営をしてきた会社であるという推測が成り立つといえます。そして、有限会社は株式会社に商号を変更することができますが、かつて有限会社であった会社も一度株式会社に商号変更すると元の有限会社には戻せませんので、商号変更は少し慎重に検討した方が良いかも知れません。
最近は「合同会社」という形態も増えてきました。例えばアマゾンジャパンなど、外国資本の日本法人が合同会社の形態を取っている例もよくあります。この合同会社も、平成18年施行の現行会社法で新たに導入されたものです。形式としては合名会社・合資会社に近いのですが、合名会社・合資会社とは決定的に違う点があり、それは合同会社の社員(ここでいう「社員」は「従業員」とは異なり、会社の出資持分を持つオーナーのことをいいます。株式会社でいう株主に近い概念です。)は、連帯保証をしていない限り会社の債務を当然には負わない、という点です。これに加えて、株式会社と比べて設立手続や運営に関する決まりが簡易であることから、会社法施行後では合同会社の形態で新会社を設立する企業が増え(特に小規模零細企業が多い)、現在ではメジャーな存在になってきています。
これから数回に分けて、会社経営者が知っておきたい会社法の基礎の基礎について連載していきます。会社内部でのトラブルを防ぐために是非知っておいていただきたいことを沢山取り上げますので、是非ご覧下さい。今回はここまで。
(次回に続く)