現在、臨時国会が開催されていますが、年明けからは通常国会が開催され、3月頃には各省庁から様々な法案が提出されることになります。
こちらのブログでは、先日より、金融庁から提出されるであろう損害保険分野の法改正の見通し、動向について取り上げてまいりました。
以前申し上げたこともありますが、見通しはあくまで見通しでしかなかった(最終的には違う内容となった)という場合もありますので、成案ができた段階でそのときに「それでは今後どうしていこうか」と考えるようなペース配分でも大きな問題は生じないものとも考えられます。
もっともそれは、議論の途中で早合点して振り回されないようにすべしという趣旨で、議論の経過に価値がないということではありません。
あくまで「ゆとりがあれば」ということで大丈夫なのですが、経過を見守ることによって、規制当局においてどういったことを問題視しているのかということが見えてくることもありますので、時間にゆとりがあれば眺めてみる価値のあるジャンルではないかと考えております。
以上のような前振りを踏まえながら今回は表題のとおり、「自主規制機関の設置」という点の議論状況をご紹介したいと思います。
金融庁や金融関係の有識者会議「金融審議会」では、ビッグモーター事件を踏まえた規制強化を行うための保険業法改正法案を次の通常国会に提出できるよう、急ピッチで議論を進めていますが、以前、規制強化の一つの施策として、自主規制機関を設置すべきではないかという話題が出ておりました。
しかし、議論の結果、今回の改正法案の中にはそのような施策は盛り込まれないということが有力になってきたようです。具体的には、自主規制機関の設置に代わり、大規模代理店を中心とした規制強化を行うことになるようです。
さて、この話については、見る角度によって少し違ったものが見えるという意味で興味深いところがあります。報道によれば、シンプルに規制強化を行う(ただし大規模代理店が主なターゲット)ということになっており、民間組織ではなく規制当局がより厳しくチェックするということなので、自主規制機関の導入よりもさらに強い規制強化が行われるというのが実際のところといえます。つまり、金融庁としては「自主規制機関の設置程度では不十分だ」と考えた、ということになります。
ただ、大規模代理店を中心に、ということなので、小規模代理店は規制強化対象から外れることになる可能性もあります。もともと、なぜ自主規制機関の設置という施策が話題になったかというと、規制当局側のリソースの問題があり、これだけ多数の代理店が存在する今の日本で当局による調査では様々な不正摘発に手を回しきれないのではないか、そうであれば、リソースを確保した自主規制機関を別途設置し、負担を分担ないし軽減すると良いのではないか、という問題意識があったようです。このような問題意識は認識しつつも、金融庁としては、小規模代理店が引き起こす問題に目をつぶるということではないにしても、問題が生じた際により深刻な状況を作出するであろう大規模代理店に集中的に取り締まりを行うという選択をしたということだと考えられます。
そうすると、(もちろん小規模代理店については見逃すという発想は全くないはずですが)法改正の中身としては小規模代理店にはあまり影響のない施策に止まる可能性や、改正後の運用としても小規模代理店からするとそこまで大きな変更はない、といった結果が導かれる可能性もあるように考えられます。
最終的にどうなるかはまだ分からないところが多数ありますが、金融庁はいわば多くの問題を抑えるというより、大きな問題を抑えるという視点で物事を考えているのではないかと推察されるところです。
さて弊所では、先日よりご案内しておりますとおり、こういった法改正の動向を定期的に確認しつつ、今後のビジネスの進め方のアドバイスなどもさせていただいております。こちらの記事をご覧になって気になる点など出てまいりましたら、ぜひご遠慮なくご相談くださいませ。