今月は、フリーランス新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。)についての解説を行ってきましたが、今回が最終回です。
ビジネスを行っている人の多くに影響を与える法律ですので、なるべく詳細に解説をしたいところではありますが、スペースの都合上、ポイントを絞って解説します。
新しい規制法が施行された直後は、行政機関が積極的に摘発を行うことも予想されます。気になる点が少しでもありましたら、ぜひ弊所までご相談ください。
さて最終回の今回は、以下の規制のうち、⑩から⑬までについて触れたいと思います。
改めて規制を列挙していきます。
① 取引条件の明示義務(3条)
② 報酬の支払期日設定義務・設定した期日までの支払義務(4条)
③ 受領拒否の禁止(5条1項1号)
④ 報酬の減額の禁止(5条1項2号)
⑤ 返品の禁止(5条1項3号)
⑥ 買いたたきの禁止(5条1項4号)
⑦ 購入・利用強制の禁止(5条1項5号)
⑧ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(5条2項1号)
⑨ 不当なやり直し要求の禁止(5条2項2号)
⑩ 募集情報の的確表示義務(12条)
⑪ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(13条)
⑫ ハラスメント対策に係る体制整備義務(14条)
⑬ 中途解除等の事前予告義務(16条)
前回(フリーランス新法③)触れましたとおり、①から⑨までは、下請法で類似する規制が存在しており、規模の大きな企業であれば、これまで用いてきた(主に中小企業を相手にすることを想定した)業務委託契約書の内容と重複する場合が多くあろうか思われます。
他方で、残りの⑩から⑬は、直接的に契約書に落とし込まなければならないものではありませんが(ただし⑬には注意が必要です。後述します。)、業務を委託する際には改めて注意しておく必要があります。
まず、⑩の募集情報の的確表示義務は、受託先を募集する際の募集事項に、誤解を招くような記載を置いてはならないというルールです。いわば「求人情報」のようなものを書く際には、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしないように注意しなければならない、というものです。
規制は基本的に全部そうなのですが、違反した当人が故意にやったのか否かということは特に問題にしてもらえず、仮に過失(不注意)だったとしても違反は違反として扱われることになります。そのため、この的確表示義務に違反していないか、業務委託の募集を出している事業者様は、この機会に改めてご確認いただきたく思います。
次に⑪や⑫ですが、これらは労働契約を結んだ従業員に対する配慮をイメージしてもらえれば分かりやすいと思います。フリーランスから、親の介護で急遽休ませてほしい、という話があれば、特段の規制がなかったこれまでは直ちに違法とはならなかったのが、これからは違法となる可能性が出てくるということになります。
そして⑬ですが、これは、1か月以上の契約を結んだ場合に発動する規制ですが、解約をする場合には30日前に予告する必要があるというものです。契約書において自動更新条項の近くで中途解約条項を定める例が多いと思われますが、その日数が30日よりも短いものになっていないか、一度ご確認いただければと思います(特に契約期間が短期間のものは、解約予告が30日を切っているものがありそうです。)。
これらは、前回も触れましたが、「従業員」の取扱いとパラレルで考えると良いのではないかと考えます。求人条件で誤解を与えるのはNG、妊娠等を控える方には十分な配慮が必要で、ハラスメント対策窓口も必要で、中途解約(解雇)も簡単にはできない、という内容となります。解約については、解雇のように様々な事情を積み重ねて初めて適法な解雇になる、というほどのハードルはないものの、急な打ち切りはできない、というものとなります。
さて、繰り返しになりますが、今回のこのフリーランス保護法は適用範囲が広く、規制の種類も色々とあります。さらに契約内容が1か月以上かどうかによってもさらに変わってくるなど、これまで同様のひな形を1パターン用意しておくというだけでは済まなくなってきている可能性がございます。結論として問題がないとしても、一度弁護士への確認依頼を出していただくことをお勧めします。特に付き合いのある弁護士がいない、ということでしたら、ぜひ弊所までご相談ください。