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フリーランス新法③

 今回も、フリーランス新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)についての解説を行っていきます。

 前回(フリーランス新法②)は、この法律の適用対象者について解説しました。フリーランスが保護対象ですが、フリーランス自体も業務を委託する立場になれば規制を受けることになるという点が特徴的ということでした。

 今回は規制の概要を解説します。

 まず、フリーランス新法における規制の概要は、下記のとおりです。
  ① 取引条件の明示義務(3条)
  ② 報酬の支払期日設定義務・設定した期日までの支払義務(4条)
  ③ 受領拒否の禁止(5条1項1号)
  ④ 報酬の減額の禁止(5条1項2号)
  ⑤ 返品の禁止(5条1項3号)
  ⑥ 買いたたきの禁止(5条1項4号)
  ⑦ 購入・利用強制の禁止(5条1項5号)
  ⑧ 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(5条2項1号)
  ⑨ 不当なやり直し要求の禁止(5条2項2号)
  ⑩ 募集情報の的確表示義務(12条)
  ⑪ 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務(13条)
  ⑫ ハラスメント対策に係る体制整備義務(14条)
  ⑬ 中途解除等の事前予告義務(16条)

 このうち、①から⑨までは取引の適正化を図るもので、下請法で定められた規制と多くが共通しています。

 他方、⑩から⑬は就業環境の整備を図るもので、下請法には定めがなく、フリーランス新法特有のものとして、労働法的視点から定められた規制といってよいでしょう。
 これらの規制は、次回記事にて詳細を解説する予定ですが、今回の記事では、上記①から⑬までの規制のどれが、どういった主体に対して適用されるのかを整理していきたいと思います。

 といいますのは、(1)「業務委託事業者」すべてに適用される規制、(2)「特定業務委託事業者」に適用される規制、さらに(3)「特定業務委託事業者」が「1か月以上の業務委託」を行う場合にのみ適用される規制、というように3分類に分けられるため、どのような主体が発注する場合にどのような規制が及ぶことになるかは把握しておくべきと考えられるからです。

 これらの規制が及ぶ事業者と規制の内容を整理すると、
  (1)業務委託事業者(=フリーランスに業務委託を行う発注事業者)全てに適用
    ①のみ
  (2)特定業務委託事業者(≒従業員がいる発注事業者)に適用
    ①、②、⑩、⑫
  (3)1か月以上の業務委託をする特定業務受託事業者に適用
    ①から⑬まで全て
 となります。

 一人で(従業員を使用しないで)活動する個人事業主が業務を受注する場合には、
 (ア) 発注者側も一人で活動する事業者であるかどうか
 (イ) 発注者側が従業員を使用するものである場合は1か月以上の業務委託か
といったメルクマールで判断していくことになりますが、最低でも取引条件は(口約束ではなく)書面や電磁的方法(電子メールやSNSメッセージ等)で明示しなければならない、ということには注意が必要です。

 次回はフリーランス新法についての解説の最終回を予定しています。最後は各規制の内容をひととおりみていきたいと思います。
 施行まであとわずかと迫ってまいりました。準備がまだできていない、あるいは不安がある、等の困りごとがございましたら、ぜひ弊所まで一度ご相談ください。

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