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フリーランス新法②

 前回に引き続きまして、フリーランス新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。)についての解説を行っていきます。
 今回は、この法律が適用される対象ないし主体、つまりどういった属性の人物ないし会社がこの法律で定められるルールを守らないといけないのか、また守ってもらえるのか、という点について解説していきます。
 なお、この「適用対象者」の問題と、具体的に適用される「規制の内容」とはセットで理解をしておく必要があります。文字数の都合上、規制内容の解説は次回にさせていただきますので、今回はやや断片的な解説となってしまうこと、予めご了承ください。

 適用対象者という話は、この法律の特徴的な要素となっており、丁寧に見ていく必要があります。
 なぜかと言いますと、(1)この法律はフリーランスを保護する法律ですが、日本語的な意味での「フリーランス」とは少しズレた概念になっているという見方があり得ること、(2)フリーランスはこの法律で定められた規制により守られる立場であると同時に、その規制を守らなければならない立場になることが多いこと、といった要因があるからです。

 法律の規定を見ていきましょう。
 (定義)
 第二条 この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するもの
    をいう。
  一 個人であって、従業員を使用しないもの
  二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれら
   に準ずる者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの
 2 この法律において「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である前項第一号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項
  第二号に掲げる法人の代表者をいう。
 5 この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。
 6 この法律において「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
  一 個人であって、従業員を使用するもの
  二 法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの

 この法律で登場する主体としては、以上のように4つ、①特定受託事業者、②特定受託業務従事者、③業務委託事業者、④特定業務委託事業者というものが出てきます。
 ①と②は受託する側で、③と④は委託する側ですので、①②が保護される側と考えてよいでしょう。なお、②についてはこの法律の中で登場する頻度が低いため、今回の解説の中での登場はここで終了とさせていただき、残りの①③④についてみていきます。

 ①の「特定受託事業者」ですが、これがこの法律で保護されるフリーランスのことを指しています。条文によれば、従業員を使用しない個人か、役員が1名だけでかつ従業員を使用していない法人(会社)がこれに該当するとされています。先ほど、(1)日本語的な意味でのフリーランスとはズレがあると言いましたが、例えば法人でもこの法律の保護対象となり得るという点は注意が必要でしょう(エンジニアが節税対策などで会社名義で業務を受注しているようなケースが念頭に置かれているのかもしれません。)。
 この「特定受託事業者」には業種や業界の限定は特にありませんので、保険代理店についても(それが法人によって運営されている場合でさえ)この「特定受託事業者」に該当する余地はあります。

 なお、「従業員を使用しない」という点は、典型的には従業員として誰も雇用していないというパターンが該当しそうですが、公正取引委員会が公開するQ&Aによれば週20時間以上かつ31日以上継続して雇用されることが見込まれる者とされています。そのため、一時的なアシスタントなりアルバイトなりを雇っているような場合であれば「従業員を使用しない」に該当する可能性があるため、完全に一人で働いていない限りこの法律の保護対象から外れる、と思う必要はないということになります。

 そして③と④ですが、④の特定業務委託事業者は、③の業務委託事業者の中で、上記①の裏返しのような形で、従業員を使用している個人や役員が2名以上いるか従業員を使用している法人を指すとされており、③のアップグレード版が④ということになります。
 そして、先ほど申し上げた「(2)フリーランスはこの法律で定められた規制により守られる立場であると同時に、その規制を守らなければならない立場になることが多い」という点については、この③の定義が肝になっています。すなわち、この法律によって規制を守らなければならない③の業務委託事業者は単に「特定受託事業者に業務委託をする事業者」と規定されているので、この条件を満たす限りいわゆるフリーランスもこれに該当するものとして扱われ、規制を守らなければならないことになります。フリーランスを守るということが核心になりますので、(④か③かで守らないといけないルールの程度が変わりはしますが)フリーランスに業務を発注する主体が会社なのかフリーランスなのかで根本的な部分での差別はされていない、と考えておくべきということになります。

 まとめますと
・保護される対象は漠然と「フリーランス」なのではなく具体的に決まっており、「一人で活動する個人」ではない場合も保護される可能性がある
・この法律によって保護されるフリーランス自身も、フリーランスに発注を行うのであればこの法律を守らなければならない主体となり得る
という点に注意が必要ということになります。

 長くなってきましたので今回はこのあたりで終了とさせていただきます。 施行があと半月後と迫ってきました。契約書の修正作業などは既にお済でしょうか。具体的にどうしたらいいのか分からない、という方からのご相談も承っておりますので、気になる点がありましたら、ぜひご遠慮なくご相談ください。

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