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フリーランス新法①

 10月に入りました。
 今月は、法務界でもホットな話題となっている、いわゆる「フリーランス新法」(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」。)が、11月から施行されます。
 本ブログの読者の方々にも関わる可能性がありますので、今月は、施行前の予習的な意味合いから、この法律の解説をしてまいります。

 初回は、それらの中であまり触れられていない、フリーランス新法制定の背景的な部分を解説させていただきます。

 「フリーランス」という用語は、今回施行されるフリーランス新法において用いられてはいませんが、おおよそ「会社勤めではなく一人で活動している、企業などから仕事を請け負って働く人」という意味として捉えておられる方が多いでしょう。なお、フリーランス新法では、「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって従業員を使用しないもの、とされています。

 契約形態で言うと業務委託契約、システムエンジニアが典型例ではないかと考えられますが、そういった技術職でなくてもフリーランスというのは当然存在しうるところですし(例えば「フリーランスのエージェント」という言葉もありますよね。)、弁護士も「フリーランス」と表現してもあながち間違いではありません。他にはフリーのトラック運転手、フリーの職人といったものも挙げられると思います。

 今回、このフリーランスに関する法律ができた経緯としては、働き方が変容し、会社に所属するのではなく、複数の会社からスポットの業務を受託するという働き方が普及してきたという点も挙げられますが、その普及に伴う法規制が十分ではないと政府が認識したところによるものと考えられます。

 働く人を保護する法律としては、労働基準法や労働契約法があります。これらは、「雇用」契約という、企業等に使用されて労務を提供し、その対価として賃金を受け取るという契約形態において、立場が弱くなりがちな労働者を保護するものです。
 もっとも、フリーランスは、労働契約に基づいて企業に所属するわけではないため、基本的にはこれらの法律は適用対象外となります。
 そのため、実際には発注事業者とフリーランスは、使用者と労働者とに類するような力関係が生じやすいにもかかわらず、雇用契約では与えられる法的保護が、フリーランスでは与えられないこととなってしまいます。

 別の切り口として、フリーランスも一事業者であることに着目し、BtoB取引(企業間取引)をしているという構成で保護する余地はないか、という視点があり、公正取引委員会では、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」を定めて、事業者とフリーランスとの取引について、下請法や独占禁止法等の適用関係を明らかにするなどの取組みをしてきました。
 しかし、下請法も独占禁止法も、取引の適正化を図るものではあるものの、育児介護等と業務の両立や、ハラスメント対策といった、フリーランスの就業環境の整備に向けられたものではありませんでした。

 このように、日本の法体系上、フリーランスに対して、取引・就業環境の両面から十分に保護される状態とはいえない状況でした。
 しかし、近年の働き方の多様化や、ニーズに応じた働き方を選択できる環境整備、フリーランスが取引先との関係で様々な問題やトラブル(報酬不払や支払遅延、発注書の不受領、ハラスメント)が実態調査によって顕著になってきたことから、フリーランス新法が制定・施行されることとなったのです。

 次回以降、この法令の適用がある主体や規制内容を解説していきますが、適用範囲はかなり広く、読者の皆様の事業活動においても注意しておくべき点は多数ありますので、ご紹介していきたいと思います。

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