先日、中小企業の金融取引を円滑にするというコンセプトで、メガバンクにおいて紙媒体の約束手形や小切手の発行を近く終了し、電子決済に移行させていくと報じられました。
現在、手形や小切手を活用されている企業はそれほど多くないとは思いますが、今回は、こちらの報道を題材とさせていただきたいと思います。
若い方の中には、手形・小切手という用語は聞いたことはあるものの、現物を見たことはない、という方もいらっしゃるかもしれません。
手形や小切手は、銀行に持参することで記載された金銭を受け取ることができるものです。約束手形と小切手は、前者は手形に記載された支払期日以降に支払いを受けることができ、後者は受け取ったその日から支払いを受けることができるという違いがありますが、どちらも代金決済ツールとして利用されてきました。
商取引では、請求書を受け取った後に期日を設けて支払う、いわゆる「請求書払い」が用いられているところ、支払う側としては、商品やサービスの購入時点ではなく、支払期日までに資金を用意すればよく、例えば「毎月この時期にこの程度の金額が銀行から落ちるから、この時期にこのくらいのお金を用意しておこうとするとこの資金はこれの支払いに回して…」といった資金のやりくりの観点から、請求書払いのような「今すぐ」の支払いを回避することや支払日を他の支払いと揃えることは有用といえます。
特に手形は、代金を延べ払いしてキャッシュフローを調整する機能を有するほか、「手形貸付」による借用書代用手段や、「融通手形」による資金調達手段としても用いられてきました。
しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れや、インターネットバンキングの普及、企業のコスト意識の高まりにより、手形交換のピーク時(1990年)と比較して、金額は40分の1、枚数は12分の1程度まで減少している傾向もあり、廃止に向かっています。
ところで、手形・小切手に限らず、紙媒体を廃止して電子化する動きは活発に進められております。
弁護士としては、やはり電子契約の普及ということが一番のトピックではないかと思います。電子契約を使ったことがない方は、まだまだいらっしゃるかと思いますが、メールでやりとりが簡単にできることに加え、印紙税や郵送、保管コストを削減できるため、企業間取引で普及しています。
以前は、契約書面等の紙媒体を前提とした法制度であったものが、電子署名法や電子帳簿保存法といった、電子ファイルを念頭においた法律も制定され、法的環境の変化を感じるところです。
ただ、電子化の流れによっても、契約トラブルを回避する、あるいは生じた後の解決を図るといった本質的課題に変わりはありません。
弊所では、これらの課題解決にも取り組んでおりますので、お気軽にご相談ください。