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ジョブ型人事

 今週、政府の会議(「新しい資本主義実現会議」)において、「ジョブ型人事指針」なるものが公表されました。
 この指針においては、冒頭で「日本企業の競争力維持のため、ジョブ型人事の導入を進める」ものとされています。これまでの制度では、①専門性を有する人材採用が難しい、②若手を適材適所の観点から抜擢しにくい、③他国ではジョブ型人事が一般的となっており、人材のリテイン(=保持。辞めずに続けてもらう、人材の確保といった意味です。)が難しい、といった課題が示されています。

 「ジョブ型人事」とは、業務(ジョブ)に対応した形での人材採用方式のことを指します。これに対し、これまでの日本の人材採用の方式を「メンバーシップ型」と呼びます。メンバーシップ型は、特定の分野ないしジョブに特化するわけではなく、まずはその組織に所属をしてもらい、その後にその人が担う役割を決めていくというような方式です。大企業において会社役員に上り詰めるまでに転勤や出向などを挟みながら複数の部署を経験させるようなものをイメージするといいでしょう。
 実際には、企業において人材採用を行う際には、こういったポジション・こういった職種といったことを指定して行われることが多く、既にジョブ型に近い状態になっているところもあります。
 しかし、例えば新卒採用については、いまだに採用時点ではどの部署に配属されるか分からず、新人研修終了後にはじめてどこに配属されるか明らかにされる、といったことも行われており、やはり日本ではメンバーシップ型が基本形であるという言い方が出来そうです。

 メンバーシップ型の良さとして、ジョブ型がジョブごとに人を割り振っていく結果、誰もカバーができていないような領域ができているときに柔軟に対応ができるという点を挙げる意見があります。こういった点からすると、メンバーシップ型は全員まずはジェネラリストとしての能力を修得することが中心となっているのに対し、ジョブ型はスペシャリストとして採用し、その後もその分野のスペシャリストとして貢献し続けてもらうというような考え方なのだと思われます。

 ジョブ型人事指針については、ネット上で公開されており、20社のジョブ型人事採用に関する取り組みが紹介されていますので、興味があればご覧いただけると宜しいかと思われます。

 最近ギグワーカーという概念についても取り上げましたが、他にもフリーランス新法が作られるなど、働き方についての新たな概念の整理が進められています。
 こういった場合には、法務観点からもしっかりと分析をしておかなければ、どのような取り扱いをすると違法になるのかという点が曖昧になり、不注意で重大な法律違反をおかしてしまう可能性が出てきてしまいます。特に、労働分野は労働基準監督署のチェックを受ける可能性もあり、慎重な対応が必要となるケースがあります。
 実際には、新たな概念が生まれれば常に法務観点からも新たなルールが作られるかというと必ずしもそうではなく、これまでの概念を少し応用・派生するだけで済むものも多数存在します。ただ、時には専門的な判断が必要となるケースもありますので、多少でも迷うところありましたら、ぜひ専門家へご相談いただくべきかと存じます。弊所では、こういった問題につきましてもご相談を承っておりますので、必要ありましたら、ぜひ一度弊所までご相談ください。

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