※※※なるだけタイムリーな話題を取り上げるという観点から、前回の続き(健康食品制度についての解説)は次回以降に延期させていただきます。※※※
既にご存じの方も多いかとは思いますが、金融庁が今度は大手代理店広告という切り口で調査に乗り出すとの報道が出ております。
調査の契機は、次のような懸念があるからとされています。
すなわち、保険代理店は複数の保険会社の商品を取り扱うことが認められています(いわゆる「乗合代理店」)。
特定の保険会社の商品のみを取り扱う専属代理店の場合は、特定の保険会社の商品の案内に限られるのに対し、乗合代理店の場合は、複数の会社の商品の中から保険商品を示してもらえることから、ユーザーの選択肢が広がることが期待されるといえるでしょう。
他方、広告料という名目で保険会社が保険代理店に金銭を支払うことによって、保険代理店としてはその保険会社の商品を顧客に勧めるインセンティブが働きますが、相場よりも大幅に高額な広告掲載料が支払われ、広告掲載料の額によって代理店が推奨販売商品に優劣をつけたとすると、外形上は保険商品を選択できるようにみえて、実際には顧客にとって必ずしも最適でない商品が提案される可能性が生じることになります。
今回は「広告代」の支払が顧客の利益を損なう要因になっていないか、という論点がありますが、相場を踏まえた適正な広告料を支払うのであれば、必ずしも顧客の利益を損なうことには繋がらないといえますから、今回の問題は、適正な金額であるかということが実質的な論点であるといえるでしょう。
サイズや表示回数、表示場所などを踏まえて、どの事業者との関係でも同じ基準に基づいて金額を支払っているのであれば、それが適正であると評価できるでしょうし、そのような基準がない場合や、基準があっても合理的理由なくそれを逸脱した金額が支払われているという場合には、不適正であると評価される可能性が高まります。
また、ある広告を出稿している保険会社の商品を勧める率や、勧め方が適切か(例えば、他の商品の方が客観的に優れているのに敢えてその保険会社の商品を勧めていないか)といった要素も考慮されることになるでしょう。
法規制をめぐる議論では、「総合的に勘案して判断する」、「適切か否か」といった曖昧な表現が用いられることがありますが、様々な要素を見ないと妥当な判断を下せないために、法令のレベルでは敢えて曖昧な表現にとどめておいて、実務やガイドラインで具体化するということがあります。
このような規制の作り方については、一律に禁止する規制(今回でいうと「保険会社は代理店に対する広告出稿をしてはならない」という規制)よりも緩やかであるからよい、という考え方もありますし、細かく基準を設ける場合には、(法令のレベルで具体的な基準とすることができる可能性もありますが)、過度あるいは広汎に規制が及んでしまい、健全なビジネス活動が阻害されるおそれもあります。
法規制が作られる際には、こういった微妙な匙加減を調整しながら行われることになり、その結果判断が微妙なケースも多数存在します。
保険の関係に限らず、法規制の解釈で迷われるようなことございましたら、遠慮なく弊所までご相談ください。