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第三者委員会とは

 不祥事が起きた際に、その原因究明を目的として「第三者委員会」が設立された、という報道を耳にすることは多いかと思います。
 本日は、この「第三者委員会」とはそもそもどのようなものかについて解説をさせていただきます。

 「不祥事」という用語は定義づけがされているわけではありませんが、一般的には、企業等における犯罪行為・法令違反のほか、社会的非難を招くような不正や不適切な行為を指しています。
 なお、最近では、「不祥事」にまつわるものとして、「インシデント」(incident)という用語が用いられることがあります。これは、「アクシデント」(accident=事件・事故)に発展する可能性がある状況のことを指しています。

 さて、例えば企業で不祥事が発生した場合、かつては、当該企業の経営者や代表者が、担当役員や従業員に調査を命じるのが一般的でした。
 しかし、このような内々の調査では、例えば身内意識から徹底的な調査を行うことができない可能性があったり、あるいは実際にはしっかりとした調査をした場合であっても、調査担当者が社内のメンバーであれば、外部からみると、調査の客観性を疑われる可能性があります。
 そのため、例えば、外部専門家を招いて内部調査に加わってもらい、調査の精度や信用性を高める方法も考えられます。もっとも、企業のコンプライアンスが重視される近年では、このような内部調査によっては、株主、消費者、従業員、場合によっては地域住民も含めた幅広い利害関係者(ステーク・ホルダー)に対する説明責任を果たしきれなくなっています。
 そこで、当該企業等から独立した委員のみをもって、公平かつ徹底的に調査を行うことを目指すために設置されるのが「第三者委員会」です。

 第三者委員会では、「当事者」ではない者による調査が行われることによって、その不祥事によって企業等が落とした社会的信頼・評判を回復するきっかけとなることが期待されます。専門家を招いた内部調査をするか、それとも第三者委員会による調査をするかは、基本的には経営者等の判断に委ねられる事項ではあるものの、大々的に不祥事が報道されたり、不買運動が起こったりする等のダメージが生じた事案では、第三者委員会を設立することが不可避となってきています。なお、第三者委員会のメンバーは、必ずしも固定的なものではなく、各事案ごとに、依頼者となる企業が、当該不祥事の内容を踏まえ、原因究明に役立つ専門家を集めるケースがほとんどです。

 第三者委員会による公正な原因究明が行われ、再発防止策が提示され、企業等の当事者がこれを踏まえた再発防止策を講じれば、ステーク・ホルダー全体の納得が得られ、例えば、株価の回復・向上につながる結果となります。
 しかし、このような企業等の外部に対する効果に加え、不祥事が発生した原因を踏まえ、改めて企業等の規律を整えるという内部的な効果も重要となってきます。
 不祥事が起きてしまった場合、再発を招きかねない状態をそのままにしてしまうことは、最終的には会社の倒産を招くようなリスクさえあります。
 例えば、商品の安全性に関するデータを偽っていたことによって社会的非難を受けた企業が、安全性の確保に対する対策を講じないまま同種あるいは安全性に関する別種の不祥事を起こした場合は、当該企業の存立は危ぶまれることになるでしょう。
 そのような事態を防止する観点からは、第三者員会によって、不祥事に関する事実の調査、調査に基づく事実認定、さらには事実の評価・分析が欠かせないといえます。
 特に、事実の調査については、不祥事を構成する事実だけでなく、その経緯や動機、背景、類似案件の存否、内部統制のあり方や企業風土等についても、調査対象となりますし、事実認定については、証拠に基づいた客観的な認定がなされます。さらには事実の評価・分析については、法的責任の観点だけでなく、自主規制やガイドライン、企業の社会的責任(CSR)や企業倫理の観点からも行われることとなります。

 不祥事に対する対策については、発生後の再発防止という事後的対策のみならず、いかにして未然に防止するか、あるいは冒頭に述べた「インシデント」レベルの段階で発見するかが肝要です。 弊所では、顧問先の皆様に対する公益通報窓口対応等、不祥事発生の防止に関する取組みのお手伝いもしていますので、お気軽に御相談ください。

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