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ステマ規制で初の行政処分

 しばらく前になりますが、「新しいステマ規制~知らないうちにステマしてませんか?~」という記事にて、ステルスマーケティング規制に関する情報をお届けしておりました。
 以前から、実質は広告・宣伝であるにもかかわらず、口コミを装って行うという点で問題視されていたステルスマーケティングという手法は、昨年秋(令和5年10月1日)から、景品表示法5条3号に基づき内閣が不当表示として指定するものに含められる形で規制されるに至っておりましたが、今般、初めてこの規制を適用して、消費者庁による行政処分が行われましたので、ご紹介します。

 今回行政処分がなされた事案は、おおよそ次のようなものです。
 すなわち、ある医療法人が運営するクリニックが、インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した人に対し、「Googleマップ」の「プロフィール」における「クチコミ」(当該施設の口コミ及び評価を示す箇所)に星5(★★★★★)又は星4(★★★★)を付けた投稿をすることを条件に、インフルエンザワクチン接種費用を割り引くことを伝えたことによって、来院者が星5を投稿した、という事案です。
 この事案では、接種費用の割引を受ける条件のもとで多数のアカウントから星5が投稿されており、実際には口コミは医療法人が表示しているものといえるにもかかわらず、あたかも来院者が個人の感想で星5をつけたようになっている点が「ステルス」(「隠密」「こっそり行う」の意味)になっているわけです。

 さて、ステマ規制の根拠となる、令和5年3月28日内閣府告示第19号の告示は、①事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、②一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの、という内容です。

 これらの要件をもとに今回の事案を分析すると、景品表示法の「表示」は、消費者に対して商品・サービスを知らせる広告や表示全般を含む概念であり、チラシやCM等の広告だけでなく、電子メール、SNSの投稿も含まれており、今回の事案も、そのような解釈に沿って、Googleマップ上の口コミも「表示」に当たるとされました。
 また、口コミの投稿はクリニックの来院者によるものですので、一見すると事業者が行う表示には該当しないようにも思えますが、事業者側で(値引きという報酬をちらつかせながら)書く内容を誘導しており、実質的には事業者が行った表示であると認定したものと考えられます。
 さらに、Googleマップの口コミは、評価(星の数)やコメントが表示されますが、それらの表示では、事業者の表示であるかどうか判別がつかないため、本件でも「一般消費者が…判別することが困難」とされたと考えられます。

 このように、今回の行政処分がなされた事案は、ステルスマーケティング規制が想定する典型例といえるでしょう。

 もっとも、今後は、例えば (1)口コミを投稿してくれたら商品券をプレゼントすると消費者に伝えたものの、内容については何も指示していないケース、(2)口コミ投稿の際にはぜひ高い評価をつけてほしいと伝えたが報酬は何も支払っていないケースといった、典型的でないケースが出てきた場合は、どのような判断がなされるかについても注目されます。
 今後の事例の集積によって、規制を受けるものと受けないものの分水嶺のようなものが見えてくるかもしれませんので、ブログでも御紹介してまいります。
 また、読者の皆様の事業における広告手法が、ステマ規制その他の不当表示に当たり得るリスクはないかに関する御相談もお受けしておりますので、本記事をご覧になって気になることなど出てまいりましたら、弊所までお問い合わせください。

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