以前、「知らなきゃマズい?下請法の話」という記事をお送りしておりました。
最近、これに関わる大型事件がありましたので、それについて解説をさせていただきます。
既にニュースでご存知の方も多いかと思われますが、日産自動車に対して、公正取引委員会が下請法違反であるとして勧告を行いました。
このニュースは、自動車業界の大手が違反を行ったという点だけでなく、この勧告により下請事業者に対して支払わなければならない金額が合計で30億を超えており、その規模の大きさでも注目を浴びています。
今回認定された違反行為は、「下請事業者に落ち度はないのに、発注時に決定した下請金額を発注後に減額した」というものになります。公正取引委員会のプレスリリースによれば、「自社の原価低減を目的に、下請代金の額から『割戻金』を差し引くことにより」と認定されており、自社都合での減額が許されないこと(当然ですが。)のほかに、『割戻金』といういかにもありそうな名目であっても許容されない、ということが読み取れます。
下請法は、下請けを中心に事業を行う者は発注元の横暴な要求を呑まざるを得ないことが多いということを前提に、下請事業者を保護するために定められた法律になります。そのため、表面上、下請事業者が素直に応じているように見えても、取引維持のためやむを得ず従っていることがあるだろうという想定のもと、公正取引委員会では下請事業者の一部を対象に、アンケートを実施しています。虚偽の報告は行ってはなりませんが、仮にそういった案内が来たときにご自身が親事業者から無理な要求を受けているようなことがあれば、正直に報告されることをおすすめします。そういうことをすると、後で報復を受けるのでは…と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった場合に備えて下請法では「報復行為の禁止」というようなルールも定められており、萎縮することなく報告を行うことができるよう制度設計されております。
また、そういったトラブルを抱えているが公正取引委員会からのアンケートをもらったことはない、という方であっても、インターネットによる申告を行うことも可能です。ただし、下請法は適用を受ける類型や事業規模といったものがやや難解に定められているため、実際に申告をすることができるのか等、気になる点などありましたら、ぜひ一度弊所へご遠慮なくご相談ください。
また、以前の記事でも触れましたが、中小事業者でも親事業者として下請法の適用対象となることがあります。これは普通でしょ、と思うような取引条件でも、思わぬところで違反に該当してしまうこともありますので、自社が下請法の適用対象になるか、違反していないかなども、今一度確認されることをおすすめ致します。