法人化(株式会社設立)について法的な観点からのご説明をする連載も今回が3回目となりました(見逃されている方は、前々回からご覧いただくと宜しいかもしれません。)。
株式会社の「所有者」と「経営者」とは理屈上は別の存在で、それぞれを「株主」、「役員(取締役)」と呼んでいるというところまでご説明していました。どちらも、皆様よく耳にされるものかと思われます。イメージは沸きやすいかもしれませんので、少し深堀してみていくことにします。
今回まずは「役員(取締役)」についてご説明いたします。
「会社役員」と言われたときに皆様はどんなものをイメージされますでしょうか。会社の偉い人、幹部、代表者などなど…おそらく皆様がイメージされるとおりのものだと考えられます。
株式会社についてルールを定める「会社法」という法律の中では、「役員」のことを「取締役、会計参与及び監査役をいう。」と定められています(会社法329条1項)。このうち会計参与というものは聞きなれないかもしれませんが、「取締役」と「監査役」についてはよく聞かれる役職かと思います。株式会社においては「取締役」は必ず置かなければなりません。他方、「監査役」は、必須のケースもありますが、小規模なところから始める場合には必須ではないと考えておいて問題ありません。
「取締役」は、会社の経営を担うということで、会社の経営方針を決めるなどして部下である事業部長などに指示を行う役職です。法律上は、会社の「意思決定決定」と「業務執行」とは別の次元のものとして整理されており、純然たる「取締役」はそのうちの「意思決定」部分をこなすべき役割とされています。もっとも、取締役が現場指揮官としても活動し、実際の業務執行に関わることも当然あり得るものとされています。
他方、「監査役」は、会社の業務執行やその意思決定が適切になされているかをチェックする立場の役職になります。監査役に選任されるのは公認会計士・税理士や弁護士といった専門的知見を有する者であることも多く、会社に予期せぬ損害を発生させないように活動する役割を担います。
ところで、「監査役」は特に誰との関係で業務を行っていることになるのかご存知でしょうか。
(これは「監査役」に限られない話ですが)会社の役員については、株主が株主総会によって決定することになっています。つまり、株主が、自分たちに恩恵を与えてくれるであろう人物を選任するという仕組みとなっているのです。もちろん恩恵を与えると言っても、株主のために会社の財産を切り崩して利益を上げさせるような不正な手段ではなく、会社をうまく運営し、企業価値を上げることで配当などを得られるようにするといったものとなります。
このため、「監査役」は、株主にとって利益を上げてくれるありがたい会社になるのだとしても、でたらめな手段で儲けを出そうとするのを止めるポジションという、株主を守るための存在ということになります。
「取締役」は企業価値の向上という意味でのアクセル役、監査役はアクセルを踏む結果違法・不当なことが起きてしまわないようにするという意味でのブレーキ役、といったものとなります。
そして、「取締役」の派生形として、「社外取締役」というものもあります。通常の「取締役」は業務執行の決定や実際の業務執行を担うのですが、「社外取締役」はそういった行動をしないのが一般的です。では何をするのかというと、会社から少し距離を置いたところで、「取締役」の行い等についてアドバイスを行うといったことを主な仕事とするようなイメージです。「ご意見番」「顧問」といったほうがしっくりくるかもしれません。
「監査役」とは違う存在であるものの、「取締役」の行動を見張るという点では共通しており、ただアクセルの踏み方や走る方向などについてアドバイスを行うということが期待されているものと考えられます。
「社外取締役」は、常に株式会社に置かないといけないわけではなく、株式市場に上場している等の一定の場合にのみ必須となっています。上場をする場合には株式が市場で流通することになるのですが、その前提としてしっかりと会社が統治されている(ガバナンスが利いている)と言える状態にするために、上場時には「社外取締役」が必須となっているのです。「社外取締役」も「株主」を守るための存在と言っても良いでしょう。
ちょうど今回、「上場」という言葉が出てきました。そこで次回は、株式会社の「所有者」である「株主」や「株式」、「上場」といった概念についてご説明していきます。
上記のとおり、「監査役」を弁護士に依頼するケースが増えてきており、また「社外取締役」についても弁護士を選ぶことで法的リスクをうまく調整しながらスピーディに新規事業を始めることができるといったことも期待できます。
当社はまだそもそも法人化は早いかな、と思われている方でも、最終的に法人化もあり得るということでしたら、最終形の青写真を描き、それに向かって徐々に組織を組み立てていくことを弊所ではお勧めしております。
将来的に弁護士を役員として選任する可能性があるのでしたら、是非早い段階でお気軽に弊所にご相談くださいませ。