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カスハラへの対応

 皆さんは、カスハラという言葉を聞かれたことはありますか?

 カスハラとは、カスタマーハラスメントの略で、カスタマーつまり顧客からハラスメント(嫌がらせ)を受けることを指しています。

 「お客様は神様です」といった標語もあるように、企業からするとお客様になんとか物を買ってもらいたい・サービスにお金を支払ってほしいというマインドから、お客様を丁重におもてなしすることが通常だと考えられますが、中にはそれを逆手に取り(?)、不当な要求をしてくるお客様も一定数存在するようです。

 不当な要求ということで、そういった被害を受けた場合には、法的には、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)や、威力業務妨害罪(刑法234条)に該当するものとして刑事告訴といった対応が考えられます。ただ、不当要求の内容・程度やそこに至る経緯・原因といった様々な要素を見て判断されることになりますので、実際にそこまでするのかはよく考えて行動する必要があります。

 ところで、政府が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」とされています。

■「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」等を作成しました!(厚生労働省HP)■
 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24067.html
■カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(PDF)■
 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

 ハラスメントということで、顧客からのクレームがなんでも対象になるのではなく、手段・態様が社会通念上不相当なもののみが対象となっているほか、ここではさらに「当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」という限定が付されています。(ここでいう「労働者」とは、そのクレームにさらされている企業で働いている従業員のことを指しています。)
 具体的には、顧客からあまりにもしつこく、激しく、無茶な要求が繰り返し行われ、その結果自社側の担当者がうつ病で入院をしてしまった、というようなケースがこれに当たるのではないかと考えられます。

 このマニュアルでは、労働者が悪質なカスハラにさらされ続けているのに適切に対応せず、むしろ顧客側へ謝罪するよう求めた企業側に損害賠償責任が認められた裁判例が指摘されており、カスハラに対しては会社として厳然たる対応を行うことが求められています。

 ちなみに、この「労働者の就業環境が害される」程の悪質な案件でなければ救済されないというわけではありません。
 このマニュアルは厚生労働省がまとめたものですが、厚生労働省は労働問題を所管する役所ですから、「労働者の職場環境を守る」というコンセプトでまとめることを前提にカスハラについて整理を行ったものと推察され、世の中に存在している不当要求全てについてここで解決することを目指したわけではなかったものと考えられます。そのため、この定義の枠組みの外にある事案でも、不法行為や威力業務妨害罪に該当する行為だと言えるものであれば、救済される余地はあると考えられます。

 もし顧客との間でトラブルを抱えていて、この要求はさすがに無茶ではないか…?といった疑問を抱かれる方がいらっしゃいましたら、トラブルが大きくなる前に専門家に依頼をして早期解決を図るべきです。弊所では、裁判のような法的手続以外にも、相手方との交渉や深刻な事案の警察への被害申告等、複数の選択肢を意識しながら柔軟に問題解決に取り組んでいます。カスハラのような案件につきましても、是非弊所にご相談ください。

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