※ 前回(事業承継、一緒に考えてみませんか?③)からの続きです。
事業承継に向けた5つのステップのうち、第三者承継による場合は、ステップ4の「M&Aの工程の実施」に移行することとなります。
この過程は、大まかに下記の手順にて進められることが一般的です。
① 意思決定
必要に応じて支援機関に相談しつつ、M&Aを実行すべきかどうかについて、意思決定を行います。
② 仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー)の選定
支援機関である仲介者やFAを選定する場合と、これらを選定せずに自ら行う場合とがあり得ます。なお、仲介者とFAの違いは、前者の場合は譲渡側・譲受側の双方と契約を締結する一方で、後者の場合は譲渡側又は譲受側の一方とのみ契約を締結するという点にあります。この選定にあたっては、国が設置する公的相談窓口である、各地の「事業承継・引継ぎ支援センター」を活用することも想定されています。
■ 宮崎県事業承継・引継ぎ支援センター ■
https://miyazaki-hikitsugi.go.jp/
③ バリュエーション(企業価値・事業価値の評価)
譲渡側の企業・事業について、仲介者、FA、士業専門家が、譲渡側経営者との面談、資料、現地調査に基づいて評価を行います。ただし、事業評価において算出された金額は必ずしもM&Aの譲渡額となるわけではなく、交渉の結果によって当事者が最終的に合意した金額が譲渡額となることに注意が必要です。
④ 譲受側の選定(マッチング)
いわゆる「相手探し」であり、近年では、インターネット上のシステムを活用して、オンラインで譲渡側・譲受側のマッチングの場を提供するウェブサイト(「M&Aプラットフォーム」と呼ばれます。)を活用することも多くなっています。M&Aプラットフォームの一例としては、「relay」があります。
■relay■
https://relay.town/
⑤ 交渉
M&Aにおける交渉においては、譲受側の経営理念や経営者の人となりを確認するための場として、譲渡側・譲受側の経営者同士の面談が実施されることも多く、M&Aにおける円滑な交渉のための重要な機会となっています。
⑥ 基本合意の締結
譲渡側・譲受側双方の主な了解事項を確認する目的で、基本合意が交わされます。
⑦ デューディリジェンス(DD)
主として譲受側が、譲渡側の財務・法務・税務等の実態について、士業専門家等を活用して調査を行います。DDで発見された点は、譲渡価格に関する再交渉において考慮される事項となり得ます。
⑧ 最終契約の締結
上記DDを踏まえた再交渉の結果、最終的な契約を締結します。株式譲渡や事業譲渡の手法が用いられることが多いです。
⑨ クロージング(M&Aの実行)
M&Aの実行として、株式や事業の譲渡、譲渡代金の支払い等が行われます。
以上の過程を経て、ステップ5である「事業承継・M&Aの実行」として、事業承継計画やM&A手続等に沿って、資産の移転や経営権の移譲を行います。
実行段階では、状況の変化に合わせて事業承継計画を修正していく意識も重要です。これにあたっては、税務・法務の手続が必要となることが多いため、弁護士・税理士等の士業専門家とともに実行することが望ましいといえます。
また、事業承継は、これを契機として、先代が行ってきたこれまでの事業を活かしながら、交代後の経営者が新たな視点で事業の見直しを行い、中小企業を新たな成長のステージに導くことも期待されます。
そのような取組みを実効性のあるものとして行うためにも、事業承継前に中長期目標を定める過程で、事業承継後の取組みについても、できるだけ具体的なイメージを持っておくことが重要といえましょう。
(次回に続く)
※ 弊所では、公的な事業承継の支援機関や民間の事業承継マッチングプラットフォームと連携して、事業承継問題に取り組んでいます。
事業承継にご関心をお持ちの際は、お気軽にお問い合わせください。