今回は、前回(事業承継、一緒に考えてみませんか?②)からの続きです。
事業承継に向けた5つのステップの4番目のうち、親族内・従業員承継の場合における事業承継計画の策定です。
親族内・従業員承継の場合における事業承継計画の策定については、まずはその計画策定の重要性を認識することがポイントです。
事業承継計画とは、今後、事業承継を進めていくにあたって、自社の状況や自社がおかれた環境を把握したうえで、いつ、誰に、何をどのように承継するのかについての具体的計画を指しています。
この事業計画の策定は、現在の経営者と、将来の経営者となる後継者との間で、事業承継に向けて共通した目的意識をもって計画を策定し、親族や従業員、取引先や金融機関といった関係者と共有しつつ、その計画を活用することで、円滑に事業承継を実現するということに主眼が置かれるべきであり、「事業承継計画書」等の成果物を作ること自体は、最終的な目的ではありません。
事業承継計画の策定に当たっては、事業承継の根幹のひとつである自社の経営理念の承継という観点から、経営者が過去から現在までの振り返りを行い、経営に対する想いや価値観、信条を再確認しておくこともポイントです。
この振り返りにあたっては、なぜその時期に、その場所で、その事業を始めたのか、さらにはその当時の事業状況や会社がおかれた環境はどうであったか、その後どのように変遷していったのか、転機となる出来事やそれが生じた状況がどうであったか、といった要素をもとに行っていくとよいでしょう。
そして、経営理念については、それらを可能な限り明文化して、後継者や従業員、取引先といった関係者と共有しておけば、それらの方々の理解や協力を得られやすくなりますし、「プリンシプルのある会社」として、事業承継後においても、一貫した強さを保って経営を継続することができましょう。
では、事業承継計画はどのように策定していけばよいでしょうか。
まずは、自社の現状とリスク等を把握した上で、例えば中長期の目標を設定することが必要です。
中長期の目標の設定については、例えば今後10年に向けて現在の事業を維持するのか拡大するのか、あるいは現在の事業にとどまるのか新事業に進出するのかといったイメージを描き、組織体制や設備投資計画の検討、売上や利益、マーケットシェア等の具体的指標に落とし込んでいきます。
この中長期目標の設定にあたっては、事業承継後に目標達成に向けて経営努力を続けていくのは後継者ですから、後継者と共同して目標設定を行うことが望ましいといえます。また、事業承継後に後継者が行う取組みも織り込めば、事業承継をきっかけにした成長も期待できるでしょう。
中長期目標の設定については、内閣府の「経営デザインシート」を活用することが想定されています。
■経営デザインシート■(PDF)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/siryou01.pdf
■経営をデザインする(知財のビジネス価値評価)■首相官邸HP
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/keiei_design/index.html
こうした思考補助ツールを用いながら、自社の現状分析、今後の環境変化の予測と対応策・課題の検討、事業承継の時期等を盛り込んだ事業の方向性の検討、具体的な目標の設定、円滑な事業承継に向けた課題の整理を行っていくこととなります。
具体的な事業承継計画のイメージについては、中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)のHPに、事業承継計画表記入様式がアップされていますので、そちらもご参照ください。
■中小企業経営者のための事業承継対策■
https://www.smrj.go.jp/tool/supporter/succession1/index.html
(次回に続く)
※弊所では、公的な事業承継の支援機関や民間の事業承継マッチングプラットフォームと連携して、事業承継問題に取り組んでいます。
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