皆様は、お客様とのお付き合いやプライベートで、ゴルフを楽しまれることがあるかと思います。
ゴルフは、競技規則のほかに、プレイヤーが当然守るべき暗黙のルール、マナーが存在するという点で紳士淑女のスポーツと言われますが、年齢、性別、経験、技量などに関係なく、皆が同じ土俵で楽しむことができるスポーツです。
しかしながら、そのようなスポーツであるがゆえ、経験、技量などの違いによる過誤、過信、不注意から、事故が発生してしまうことがあります。
そこで今回は、ゴルフのプレー(ショット)によって発生した事故が裁判で問題となった最近の事例を1つご紹介させていただきます。
初心者AさんとベテランBさんが同じ組で回っていたところ、Aさんがフェアウェイ前方にいるBさんのほうに打ち込んでしまった事例です(東京地判平成29年10月26日)。
この事例は、Aさんが第1打を右側の谷に打ち込み、ボールを探しに行ったものの見つからず、その間にBさんがカートを進めてAさんより前に移動していたところに、Aさんが新しいゴルフボールをフェアウェイに置いて再開しようとしました。BさんはそのようなAさんの様子に注意を払っておらず、他方、Aさんも前方30ヤード付近にいるBさんが安全を確保できる状態にあることを確認しないまま前方に向けてボールを打ったところ、Bさんの左耳に当たってしまいました。
裁判所は、初心者Aさんには、Bさんが安全を確保できる状態にあることを確認せずにボールを打った点に安全確保を怠った過失があり、他方、ベテランBさんにも、Aさんが谷に打ち込んだボールを探していたにもかかわらずその前方に移動し、その後のAさんの様子に注意を払わなかった点に安全確保を怠った過失があるとしました。その上で、AさんがBさんに注意を促す声掛けをすることは容易であったとして、Aさんの過失を6割、Bさんの過失を4割と判断しました。
ショットをしたわけではないBさんの過失が大きいと思うかもしれませんが、Bさんの過失の前提には、同伴プレイヤーは他のプレイヤーがショットをするときにはその前に出てはならないというルール、マナーの存在があり、また、Aさんが初心者で、同伴するベテランBさんはそれに注意を向けるべきであったことなどが考慮されていると考えられます。
ゴルフプレー事故の事例では、双方の過失の有無、割合が問題となり、その際には、先に述べたゴルフの特徴である暗黙のルール、マナーや、各人の経験、技量などが考慮要素となりますが、交通事故事案と同様に、過去の裁判例等を踏まえた過失割合の検討が重要となります。
また、ゴルフプレー事故以外にも、ゴルフカート事故、ゴルフ場の整備不良に基づく事故など、ゴルフに関係する事故類型は様々存在します。
このような事故が発生すると娯楽の時間から一転してしまいますが、ゴルフをする方にとっては被害者、加害者のいずれにもなる可能性があり、このことは交通事故と同様です。
弊所では、過去にゴルフ事故事案の対応経験があり、ゴルフ事故が発生したときに早期の段階で弊所にご相談いただけましたら、スムーズに法的サポートができますので、お気軽にお問い合わせください。