ビッグモーター社の不適切な保険金請求が明るみになり、社長が記者会見でその事実を認め、謝罪するに至りました。
同社の特別調査委員会の報告書によると、同社の工場では、ゴルフボールを靴下に入れて振り回して車体を叩くなど、入庫時には存在しなかった損傷を新たに作出し、修理範囲を拡大させるという悪質な行為のほか、不要な鈑金・塗装作業や部品交換の実施などの不適切な行為があったと報告されています。
同社のこのような行為には、刑法の器物損壊罪に当たり得るものがあるほか、そのような修理を前提として保険会社に保険金を請求することが刑法の詐欺罪に当たり得るものもあると考えられます。
今回の事案ではビッグモーター社での修理が問題とされましたが、これは、同社に限らず、交通事故後に車両を他の修理工場で修理する場合にも同様に当てはまります。
交通事故後に修理工場に修理に依頼したとき、①知らないところで車両に対する損傷行為が行われていたら、修理工場に何か主張できることがあるでしょうか。②不要な鈑金・塗装作業の実施などの不適切な行為が修理工場で行われたことを知っていたとき、修理工場ととも何か責任を取らなければならなくなるでしょうか。
①については、自身が被害者となりますので、捜査機関に対して被害申告や刑事告訴をすることが考えられますが、いつ、どこで、誰が、車両のどの部分を損傷したのかなどの証明が難しい可能性があり、また、既に修理実施済みであるため、実際に捜査機関に申し出することができるか、捜査が動くかについては、個別のケースを慎重に検討する必要があります。
②については、自身が加害者(共犯者)となる可能性がありますが、当時の状況をどこまで認識していたのか、積極的に関与していたかなど、これも個別のケースを慎重に検討する必要があります。
今回のような不適切な保険金請求は、通常、修理業者の内部のみで行われるため、自身の車両でそのような事態が起きていることを具体的に把握していないことも多いと予想されますが、今後、ビッグモーター社の事件にとどまらず、他の修理業者にも同様の問題が発生していたことが次々と明らかとなり、自身が修理を依頼したことがある業者も含まれるかもしれません。
そのような事態が発生したときに、修理業者に適切に責任を追及し、あるいは自身が不当に責任を取らされることのないよう、どう対応していくべきかは、早期の段階で弁護士に相談し、助言を得たり、具体的に委任を検討していただくことが重要となります。
弊所では、交通事故案件の対応に加えて、刑事事件における被害者代理人、刑事弁護人としての対応や、不正請求に関する保険会社との交渉(防御)対応など、様々な局面でのサポートが可能ですので、お気軽にお問い合わせくださいますようお願いいたします。
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